第77回福島県文学賞 3部門で正賞 小説・ドラマ丹野さん(福島) 短歌斎藤さん(鏡石) 俳句宮本さん(南相馬)
福島県民の文芸活動に光を当てる第77回県文学賞の受賞者が決まり、主催する福島民報社と県、共催の県教委が29日発表した。全5部門のうち、小説・ドラマ部門で無職丹野彬さん(81)=本名・丹野幸男、福島市=の「阿修羅道」、短歌部門で自営業斎藤秀雄さん(50)=本名・斉藤日出夫、鏡石町=の「手紙の卵」、俳句部門で菓子製造販売業宮本みさ子さん(80)=本名・宮本ミサ子、南相馬市=の「原発忌」が正賞(文学賞)に輝いた。 丹野さんは県内の戦没者らを取り上げた物語を創作した。登場人物の心理や言動の描写に優れ、戦争のむごさと理不尽さを捉えた力作とたたえられた。 斎藤さんは1年間書きためた歌の中から作品を選出した。独創的な感性と、既成の表現を一歩踏み出す世界観があると審査委員の意見が一致した。 宮本さんは東日本大震災発生後の状況を誠実に見つめ、30句に仕上げた。被災者の心情と強い郷土愛を感じさせ、未来への警鐘となる作品だと評された。
県文学賞は1948(昭和23)年度の創設。正賞は県内文学界で最高の栄誉とされる。今年度は5部門に250作品(前年度比28作品増)が寄せられた。表彰式は11月3日、福島市の杉妻会館で行う。 ■審査の選評励みに 丹野彬さんの話 退職を機に執筆を始め、毎年欠かさずに応募して自分の力量を試してきた。審査委員の方々の選評が励みになり、自分を奮い立たせてくれた。正賞に選ばれ、非常にうれしい。支えてくれた関係者に感謝している。 ■身近な人に短歌を 斎藤秀雄さんの話 応募3年目で正賞をいただき、驚いている。県内の文学賞ということもあり独特の緊張感があった。身が引き締まる思いだ。より身近な人に短歌に取り組んでいることを知ってもらい、読んでもらえると思う。 ■震災伝え続けたい 宮本みさ子さんの話 何度か応募してきたが、正賞をいただいて驚いている。東京電力福島第1原発事故の影響で、双葉町にある実家に帰ることができなくなった。東日本大震災や原発事故を風化させることなく伝え続けていきたい。