「地面師たち」が海外で“失速”のなぜ 日本の視聴者は気付かない「物足りなさ」と「息切れ感」
短い総視聴時間
日本国内では独走状態の「地面師たち」。海外でも「Tokyo Swindlers: Season 1」のタイトルで5週にわたりNetflixグローバルTop 10 TV (非英語)にランクイン。ケニア、香港、ベトナム、パキスタン、韓国など15の国と地域でトップ10入りした。ただ、懸念材料もあるという。 「確かに日本ドラマの躍進といえるのでしょうが、トップ10入りした15の国と地域のうち、最長が日本と台湾の6週連続、次いで香港の5週連続、パキスタン、韓国、タイは2週でランク圏外、マレーシア、シンガポール、ベトナムはわずか1週だけでした。グローバル市場で人気を広げるためには、さらなる工夫が必要でしょう。 世界的大ヒットとなった韓国ドラマ『梨泰院クラス』は全16話で各70分、『愛の不時着』も同じく全16話で各話約70~110分という長さです。それに比べ『地面師たち』は各話37分から66分で全7話です。総視聴時間が短いため、辻本以外の主要キャラクターがどのような人生を送ってきたのかは、ほとんど描き切れていないところが惜しいです」(同) 確かに、小池栄子演じるなりすましの手配師・稲葉麗子や、北村演じる情報屋・竹下、さらに少年院に入っていたという竹下のパシリ・オロチ(アントニー)、身分証の偽造屋・長井(染谷将太)らの来歴にはあまり触れられていない。テレビ局関係者がこう話す。 「予算上の問題や時間的な事情により、全7話で息切れしてしまった印象はありますね。主要登場人物の背景説明や人物像など細部の描かれ方が少ないため、海外視聴者は物足りなさを感じてしまうのではないでしょうか。特に最終回ラストの呆気なさは意外でした。綾野と豊川のダブル主演ということなので、この2人を立てたストーリー構成とも言えますが、それではキャスティング忖度の激しい民放ドラマと同じになってしまいます。地面師という題材は非常に興味深いので、登場人物の細かい背景 まで含めて全16話に仕上げていくことは決して不可能ではありません」 この7月には続編にあたる小説『地面師たち ファイナル・ベッツ』が出版された。海外に逃亡したハリソンが、シンガポールで新たな地面師チームを結成し、北海道・苫小牧の土地をめぐって200億円の詐欺を計画するという。続編の配信を期待したい。 デイリー新潮編集部
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