特定技能外国人、熊本県内で活躍中 対象分野を拡大、貴重な戦力に
深刻な人手不足を背景に、一定の専門性や技能を持つ外国人材「特定技能」への注目が高まっている。熊本県内では昨年10月末時点で約2500人の特定技能の外国人が、農業や介護、製造業を中心に活躍中だ。今年3月には、特定技能の対象に自動車運送業など4分野を追加し16分野に拡大することが決まり、存在感がさらに増しそうだ。 熊本の経済ニュース
11月下旬、美里町の山あいにある作業場。パワーショベルが、道路の舗装に使う石を用途別に仕分けていた。重機を巧みに操るのは、「特定技能1号」の在留資格を持つネパール人のマガール・ラジ・バハドゥールさん(40)だ。「母国に比べインフラ整備が進んでいる日本で、道を造れるのはうれしい」と笑顔で語る。 マガールさんは2017年、土木工事業の菊池組(美里町)に技能実習生として入った。「日本語が難しくて会話の3割くらいしか理解できなかった。ごみの分別など生活上のルールの違いにも戸惑った」と当時を振り返る。 菊池組にとっても初の外国人材。菊池武社長(71)は「慢性的な人手不足を解消する〝期待の星〟として受け入れた。言葉や文化の違いを教え込むことはせず、社員同士でコミュニケーションを重ねる中で自然と身に付くよう意識して見守った」と言う。 熱心に仕事に取り組むマガールさんを、周りの社員が応援。「準中型」の運転免許取得を目指していた頃には、社員総出でテキストの漢字に読み仮名を書き込んだ。10回目の挑戦で合格を果たすと皆で祝福した。
マガールさんはネパールに妻と息子2人を残して来日した。いずれ帰国して日本で学んだ技術を生かすつもりだったが、次第に「この会社でずっと働きたい」と思うようになった。 22年、試験に合格して技能実習から特定技能に移行。将来は家族と日本で暮らすため、家族の帯同や将来的な永住も可能な「特定技能2号」の取得を目指している。 特定技能の在留資格は、国内の人手不足を補うために19年に新設された。熊本労働局によると、熊本県内は2508人(昨年10月末時点)で、1万8226人いる外国人労働者の14%を占める。 産業分野別では、農業の983人(39%)を筆頭に介護434人(17%)、飲食料品製造業432人(17%)と続く。建設は132人(5%)で、県建設業協会は「技能実習からの移行組を含め、受け入れはさらに広がる」とみる。 菊池組で働く外国人材は現在6人(特定技能、技能実習生各3人)。全員がネパール人で、全社員20人の3割に当たる。菊池社長は「人材確保が年々難しくなる中、外国人材は貴重な戦力で欠かせない存在。長く働きたいと思ってもらえる職場づくりを進める」と話す。(岩崎皓太)