トランプ氏、安全保障の対応を強調 対中国でグリーンランド・パナマ運河の獲得に意欲
【ワシントン=坂本一之】トランプ次期米大統領は8日、デンマーク自治領グリーンランドと中米パナマ運河の管理権の獲得に改めて意欲を示した。連邦議会で記者団に述べた。トランプ氏は安全保障問題や影響力を拡大する中国への対処を理由としている。トランプ氏の言動に反発や批判の声が出ても妥協する姿勢は示しておらず、20日の政権発足後もデンマークとパナマ両国に圧力をかけていくとみられる。 トランプ氏は8日、グリーンランドを前日に訪れた長男のジュニア氏が歓迎を受けたとし、同地買収への意欲を重ねて示した。これまでトランプ氏は「自由世界を守るためにグリーンランドが必要だ」と主張している。 グリーンランドは米中露が覇権争いをする北極圏に位置する。北極圏ではロシア軍が多数の基地を持ち、中国が資源活用を狙って活動を拡大。露中両軍がアラスカ周辺で共同作戦をするなど米国への威圧も強めている。 海氷下では米露の潜水艦がにらみ合い、米国防総省内ではロシアに対抗して砕氷船を増やすべきだとの声もある。 グリーンランドにはミサイル防空などを担う米軍基地があるが防衛体制を強化し、北極圏の海を「中国やロシアの船舶」に支配させないとの立場だ。ただ、一方的な主張にデンマークは強く反発し、米国のブリンケン国務長官も批判している。 パナマ運河を巡っては同国が2017年に台湾と断交し、中国と国交を樹立。中国の影響力拡大を踏まえ、トランプ氏は「悪者の手に落ちるのを許すわけにはいかない」と訴える。ロイター通信によると、運河管理に中国は関与していないが、運河の拠点港の運営を香港系企業が続けている。 トランプ氏は「中国が運河を運営している」と主張し、運河建設に巨費を投じた米国の船舶に「高い通航料」を課しているなどと批判。米国の貿易赤字を嫌うトランプ氏は、米船から徴収する通航料を「不公平だ」と問題視し料金是正や管理権の返還を求めて圧力を強めていくとみられる。