英国債の急落続く、10年債利回りは2008年8月以来の4.81%
(ブルームバーグ): 8日の欧州債市場で英国債が急落し、指標の10年債の利回りは2008年8月以来の高水準となった。根強いインフレ圧力を巡る懸念が背景にあり、2022年のトラス首相(当時)時代の金融市場の混乱とも比較され始めた。
英10年債利回りは一時12ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、4.81%を付けた。また、30年物の物価連動債利回りはトラス氏が首相だった22年9月以来、初めて2%を超えた。ポンドはG10のすべての通貨に対して下落し、対ドルでは1%以上下げている。
英国の借り入れコストはここ数日で既に急騰し、長期債利回りは1998年以来の高水準に達している。22年の「トラス危機」時ほどの様相ではまだないものの、投資家は神経をとがらせており、政府の財政計画には狂いが生じる恐れがある。
国際決済サービス「イーブリー」の市場戦略責任者マシュー・ライアン氏は「2022年にトラス氏が予算案を発表した後の動きほど劇的ではないものの、債券利回り上昇が経済に与える影響は、特に住宅ローン金利上昇の点で軽視できない」と述べた。
このところの利回り急騰は、財政規律の健全化を進めようとしているリーブス財務相にとってはさらなる頭痛の種だ。リーブス氏は日常的な支出のための借り入れ回避を交渉の余地なく堅持する意向だが、99億ポンド(約1兆9300億円)の財政のゆとりが減り続けている中、こうした約束も圧力にさらされている。
英国債にストレスの兆しが表れないか、最近の入札をトレーダーらは注意深く見守っている。8日は過去10年余りで最大規模の5年債が発行され、その後で同年債利回りは1年3カ月ぶりの水準に上昇した。
ロイズ・バンキング・グループの市場分析責任者サム・ヒル氏を含むストラテジストらはリポートで、「財政の持続可能性に関する疑問が再浮上している。リーブス氏には、財政的余力を取り戻すための方策を説明するよう圧力がかかりそうだ」と述べた。