感染者増でも新たな「在宅勤務」導入はわずか0.9% 大企業と中小企業で格差が広がる
業種別最多は、「在宅許可」インターネット附随サービス業、「出社前提」道路旅客運送業
Q1で「在宅許可」と回答した企業の業種別(母数10社以上)は、最多がポータルサイト・サーバ運営業などを含む「インターネット附随サービス業」の71.4%(14社中、10社)だった。 次いで、受託開発ソフトウェア業などを含む「情報サービス業」が64.9%(368社中、239社)、経営コンサルタントなどを含む「専門サービス業」が55.4%(256社中、142社)で続く。 「出社前提」の業種(母数10社以上)は、最多がバス業やタクシー業などの「道路旅客運送業」の95.0%(20社中、19社)だった。次いで、学校や保育園などを含む「学校教育」が91.3%(46社中、42社)、美容・理容業、クリーニング業などの「洗濯・理容・美容・浴場業」が90.9%(22社中、20社)と続く。 インターネット関連や情報サービス業など、いわゆるIT業はもともと社内システムや社員同士のコミュニケーションで用いられるチャットツールなどの導入が進み、在宅勤務との親和性が高い業種だった。コロナ禍でも業務遂行に大きな障害はなかったとみられる。 一方で、「出社前提」なのは、消費者と直接対面するBtoC業種が多く、利用客や消費者へのサービス提供のビジネスモデルは出社による業務遂行が避けられないことを示している。
Q2.Q1で「これまでと変わらず出社を前提としている」と回答した企業で、選択した理由は何ですか?(複数回答)
選択理由の最多は、「業務の特性上、在宅勤務がなじまない」で76.1%(4,893社中、3,726社)だった。次いで、「新型コロナの感染症法上の分類が5類であるため」が25.8%(1,263社)、「人員の関係上、在宅勤務にすると業務に支障を来たす」が19.4%(953社)、「在宅勤務はコミュニケーション不足が生じるため」が9.6%(473社)、「在宅勤務を中心にすると従業員間で不公平が生じるため」が7.6%(373社)と続く。 「その他」の回答では、「情報セキュリティ上の問題」(配電盤・電力制御装置製造業、資本金1億円未満)や「出社の方が社員のパフォーマンスが高い」(無店舗小売業、資本金1億円未満)、「社風、経営者判断」(鉄鋼製品卸売業、資本金1億円未満)などがあった。 ◇ ◇ ◇ これまで新型コロナ感染者数の動向に応じ、勤務体制は出社前提から在宅勤務の定着と変化してきた。だが、4年に及ぶコロナ禍を経て「働き方」が見直され、感染者数に関係なく大企業では在宅勤務が定着する一方で、中小企業は出社に戻している。 新型コロナウイルスの急激な感染拡大で、企業は規模、業種を問わず休業や在宅勤務など、未経験の対応を迫られた。だが、コロナ禍が落ち着くと規模や業種、人員状況、生産性などで、企業によって考え方は千差万別になっている。個別企業の対応に限度はあるが、経済活動が平時に戻ると押し寄せた採用難では、在宅勤務や労働環境の差が大きなポイントになっている。 在宅勤務の導入はメリット・デメリットの両面があり、単純な導入は経営効率に影響を及ぼしかねない。企業が自社の置かれた環境を見直しながら、決定することが求められる。
東京商工リサーチ