2024年、規制における歩み寄りの1年に
一昨年末に複数の暗号資産(仮想通貨)事業者が破綻したことを受けて、多くの行政機関がこの業界を「不正、詐欺、倒産、マネーロンダリングが蔓延している」と断じた。
規制当局と業界が対立した1年
これらの問題を是正するため、アメリカの証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)は2023年、暗号資産業界の参加者に対し、合わせて200件以上の執行措置を実施。体に良いものと悪いものを区別できない自己免疫反応のように、規制当局は法律を回避しようとした者と遵守しようとした者の両方に対して訴訟を起こした。 取り締まりの網にかかった者の中には、猫をテーマにしたNFTの販売業者、分散型自律組織(DAO)、さらにキム・カーダシアン、ポール・ピアース、リンジー・ローハンといった多数の有名「インフルエンサー」が含まれている。 規制当局は、すべてと言っていいほどの業界参加者が、暗号資産への適用が疑問視されている、大恐慌時代の法律に違反していると見なし、より詳細な規則策定を求める嘆願を却下した。 しかしSECは2023年、リップル(Ripple)とグレイスケール(Grayscale)に対する裁判で敗訴し、2つの黒星を負った。またCFTCは現在、暗号資産取引所との長引く訴訟に関与するよりも、和解に関心があるようだ。 昨年が規制vs分散化の1年だったとすれば、2024年は規制における歩み寄りの年になるかもしれない。 大統領選挙の年に議会が包括的な暗号資産法案を可決する可能性は低いが、規制当局は、上手くいっていない執行による取り締まり戦略を縮小し、代わりに告示とコメントによる規制策定(規則案を連邦官報に掲載し、パブリックコメントを受け付けるシステム)とノーアクションレター(民間企業が新たな事業活動などについて、その合法性を事前に文書で確認できる制度)を組み合わせて、暫定的な規制フレームワークを策定するために業界と協力することを選ぶかもしれない。 暗号資産業界の参加者と規制当局には共通の利害がある。両者とも2022年末(FTXの崩壊後)に同じように足元をすくわれており、即座に立法によって解決する可能性が低いなか、悪質業者が再び善良な業者を潰さないようにしたいはずだ。 SECのゲイリー・ゲンスラー委員長が、業界内の「広範なコンプライアンス違反」とされるものに対する聖戦の手を緩めることはなさそうだが、SECをはじめとした規制当局は今年、妥協する必要があるだろう。