KDDIが宇宙スタートアップを支援する「MUGENLABO UNIVERSE」を開始、その狙いは?
具体的には、KDDIとパートナー企業によって、宇宙に関するさまざまな技術検証ができる衛星やデジタルツインなどのオープンな環境を提供。それをスタートアップに活用してもらうことで技術研究開発をしやすくするとともに、その成果を大企業と共創して事業化を検討することにより、地球上でのビジネス創出にもつなげていくとのこと。2027年には、低軌道上(高度2,000kmまで)の環境で、2030年には月面を活用した共創の達成を目指すとしています。
■設立の契機、スペースデータ佐藤氏の考えとは KDDIのオープンイノベーション推進本部長である中馬和彦氏と、宇宙関連スタートアップのスペースデータの代表取締役社長である佐藤航陽氏によるトークセッションでは、MUGENLABO UNIVERSEの設立に至ったより具体的な経緯も明らかにされました。そのきっかけとなったのは、KDDIの代表取締役社長である高橋誠氏が、同社が力を入れているデジタルツインに関する議論をするべく、メタバースに造詣の深い佐藤氏を呼んだことだったといいます。
ただ、その時佐藤氏は、高橋氏らの予想を裏切って宇宙に対する思いを力説。その話を聞いた高橋氏が、より大きなスケールで事業展開を考えていく必要があるとして、検討が進められたのがMUGENLABO UNIVERSEになるのだそうです。 佐藤氏はトークセッションの中でも、宇宙に対する自身の考えを披露していました。佐藤氏によると、人類のフロンティアは仮想空間と宇宙空間の2つであるそうですが、これまでイノベーションをけん引してきたインターネットとグローバリゼーションが、国家間の対立や戦争などによって歪みが出てきている現状、宇宙開発、ひいてはあらゆる産業をデジタル化ならぬ“宇宙化”する企業が、今後のビジネスをけん引することになると考えたそうです。 そのためには、インターネットの普及とグローバリゼーションが進んだ20年前と同じ取り組みが必要だと佐藤氏は説明しますが、民間企業が宇宙関連事業に参入するハードルは非常に高いとのこと。なかでも、宇宙空間では電力や通信なども地上と同じようには扱えず、非常に多くの制約の下で取り組む必要があることが大きな参入障壁になっているそうです。 しかも、そうしたノウハウは、宇宙関連事業で実績を持つ特定の企業や団体が持っており、ブラックボックス化しているのが現状。そこで佐藤氏が率いるスペースデータでは、宇宙にノウハウを持たない民間企業でも、打ち上げる前段階までの実証ができるオープンなプラットフォームを作ることに取り組んでいるそうです。