衰え知らず!芸能生活50周年の明石家さんまが「年末年始の顔」として”お笑いの最前線”に君臨できるワケ
宴会部長であり底抜けに明るい父親
年末年始特番はバラエティでおなじみの顔ぶれだけではなく、各世代のタレント、アーティスト、アスリート、文化人など、さまざまなジャンルのゲストが集まるだけに、MCとしての対応は難しい。 その点、キャラクターやバックボーン、年齢やキャリアなどのギャップをもろともせずに切り込めるさんまの突破力は断トツ。キャリアもスキルも最高峰のベテランが多少の無理を承知で年下世代にも食い込もうとする姿が視聴者の笑いにつながっている。 芸能人に限らず世間のビジネスパーソンも、年齢やキャリアを重ね、スキルが上がるほど周囲の人々と距離を取りがちになるもの。ゆったり構えるなど受け身になりがちだが、さんまは噛み合わないことを気にせずあらゆるキャラクターや世代のゲストに話しかけていく。「どんな相手であれ笑いにつなげられる」という自信があってこそのスタンスだが、出演人数の多い年末年始特番ではその強みが際立ち、お祭り騒ぎのムードにつなげている。 年末年始特番におけるさんまは、先頭を切ってはしゃぐ宴会部長であり、底抜けに明るい父親のような存在なのだろう。実際、何でも笑いにつなげておいしいところをかっさらう“お笑い怪獣”であるだけでなく、話をしっかり聴いて優しい言葉をかける姿が増えるのもこの時期ならでは。特に年末特番では、さんまが好む“笑いの戦場”というだけでなく、「生きてるだけで丸儲けだった一年を笑顔で終わらせよう」という癒しのムードも感じさせられる。 年末年始特番がさんまに集中しているのは「ほかにお祭りムードを醸し出せる芸能人が少ない」ことの裏返しなのかもしれない。ただ、それ以上に「さんまには70代になっても80代になっても、このような昭和のノリで楽しませてほしい」という人のほうが多いのではないか。
“さんま特番”が年末年始の風物詩
さんまが年末年始特番の顔であり続けるもう1つの理由は、衰え知らずの現役感にある。 時に声が枯れていることをネットメディアに指摘されることもあるが、同じお笑いBIG3のタモリとビートたけしは出演番組を減らし、同世代の笑福亭鶴瓶や所ジョージ、下の世代のダウンタウンやウッチャンナンチャンですら一歩引いたポジションに留まる中、さんまだけは今なお笑いの最前線に君臨。自らも声を張って笑いを取りにいく芸風は変わらず、年末年始特番ではさらにワンランク元気な姿を見せている。 つまり世間の人々は年末特番で「さんまは今年も元気でよかった」と一年を振り返り、年始特番で「さんまは今年も元気だろう」と一年をはじめる。さんまの同年代はもちろん、あらゆる年齢層に自分と重ね合わせて考えさせ、元気を与える存在なのだろう。 特番の中で『明石家サンタ』や『夢を叶えたろか』は一般人と会話をかわす機会が多く、直接的に元気を与えている。また、『ご長寿グランプリ』では自分より高齢の出演者たちから元気をもらって、自分のパワーに変えている感すらあるなど、まだまだ衰えは感じられない。 さらに“年に一度の特番を仕切る大ベテランのMC”としてだけでなく、他のレギュラー番組に特別感を加える“年に一度のスペシャルゲスト”にもなれることも、年末年始特番の顔でいられる理由の1つ。事実『笑ってコラえて!』や『アメトーーク!』の年末特番は、さんまのゲスト出演を年に一度のお祭りとして扱い、スケールアップの象徴にしている。 『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)や『輝く!日本レコード大賞』(TBS系)は賛否を集めながら放送を続けているが、その他では年末年始の風物詩と言われる特番はほとんどなくなってしまった。視聴者に「ふだんの特番とほぼ同じ」とみなされ、年末年始ならではの特別感は薄くなっている。 そんな背景があるからこそ、いまだに特別感を醸し出せる年末年始の“さんま特番”はテレビ業界にとって重要であり、各局が「最後の砦」として重宝しているのだろう。個別の特番というより、数多くの“さんま特番”が集中放送されること自体が年末年始の風物詩と言っていいのかもしれない。
木村 隆志(コラムニスト/コンサルタント)