辰巳琢郎、大学卒業と同時に朝ドラに出演。きっかけは新聞の小さな記事「なぜか受かる気がしていた」
朝ドラ撮影後、劇団に戻るつもりだった
『ロマンス』で全国デビューした辰巳さんは、知的な雰囲気と端正なルックスで人気を集め、“インテリ俳優”の先駆け的存在に。 「『ロマンス』に出た後も劇団に戻るつもりではいましたけど、少しずつ仕事が入るようになって。大映テレビさんから『少女に何が起ったか』(TBS系)のお話をいただいて、しばらくはピアノの練習をしたりしていましたね。キョンキョン(小泉今日子)の相手役というすごく良い役でした。 でもそれほど売れっこになったわけじゃなく、そろそろ関西に戻ろうかなと考えていた頃でしょうか。1988年に『連想ゲーム』(NHK)が決まって、ちょっと風向きが変わってきた」 ――解答率が高くてすごかったですよね。“インテリ俳優”の先駆け的存在に。 「そういう形で一応注目されたので、ありがたかったです。当時は結構珍しいほうだったんでしょうね(笑)。ドラマ以外では初レギュラーだったのですが、子どもの頃から見ていた番組というか、大好きな番組だったのですごくうれしかったですね」 1991年、辰巳さんは『もう誰も愛さない』(フジテレビ系)に出演。このドラマは愛に飢えた若い男女(吉田栄作・田中美奈子)が金と愛欲の果てに犯罪を重ねていく様を描いたもの。辰巳さんは、ヒロインの愛人で一見物腰やわらかな紳士だが冷酷で嫉妬深い不動産企業の青年社長・米倉俊樹役。 ――地上げ屋として成り上がり、金と暴力で女を服従させる男の役というのは、それまでのイメージとまったく違いましたね。 「そうですね。あれはおもしろかったですよ。おもしろかったというか、同じような役を演じるのは、実はあまりおもしろくないんですよ。何か決まったようなキャラクター、色がついてしまったら、なかなかそれを壊しにくい。 そういう意味でおもしろかった。もともと飽きっぽいほうなので、いろんなことをしたいなというのがあるんですね。だから、これもアリかな…みたいな感じでした」 ――社長からチンピラ同然の生活に転落しますが、実は彼女のことを深く愛していて彼女のために命を落とすことに。放送をご覧になって、ご自身ではいかがでした? 「僕は何か恥ずかしくて、あまり自分が出演した番組を見ないんですよ(笑)。撮影した後に1回プレイバックして、自分のシーンをチェックはするんですが…もともと学生時代以来、あまりテレビを見ない生活なんです。テレビ業界にいながらテレビをあまり見ないのはプロとして失格だったなと最近は反省していますが…」 同年、『辰巳琢郎のくいしん坊!万才』(フジテレビ系)、『たけし・逸見の平成教育委員会』(フジテレビ系)の放送もスタート。1994年には、『浅見光彦シリーズ』(TBS系)も始まり、全13作に主演。 次回は撮影エピソード、2024年4月26日(金)に幕を開ける舞台『ワインガールズ』、ワインのプロデュース、近畿大学文芸学部客員教授としての活動も紹介。(津島令子) ヘアメイク:釣谷ゆうき