Twitterという「孤独の解毒剤」が奪われた2023年。イーロン・マスク買収後は“なりすまし”や差別用語も激増…“ゴッサム・シティ”となり果てたTwitterは何を失ったのか
青い鳥は「夢と希望と無限の可能性」を表していた
「自由と希望と無限の可能性」の象徴として生まれた青い鳥は、2012年の登場以来、ずっと愛され続けてきた。当時のTwitterには、この3つが確かにあった。 2010年には、当時の首相・鳩山由紀夫氏がアカウントを開設し、ソフトバンクの孫正義社長がTwitterで意見を募集して実行する「やりましょう」が社会現象化していた。名声や社会的立場などにまたがる高い壁を、青い鳥は悠々と越えていたのだ。 2011年の東日本大震災では、刻一刻と変わる状況を知る情報インフラとしてTwitterが機能するだけではなく、多くの人の不安を癒す面も担っていた。遠く離れた場所にいても、そこにアクセスすれば、時間と空間を縮めて一緒にいるような気持ちになれた。 Twitterは個々人のコミュニケーションも大きく変えた。「自分を物語ることで、社会へと接続する」手段として、これまでのWebサービスと一線を画していた。 それ以前は、自分を物語る行為自体が「自己愛が激しい」として揶揄の対象になることも多かったが、Twitterはいつも「いまどうしてる?」と聞いてくる。自分を語っていいと背中を押してくれたのだ。 当時、大学生だった筆者も「スタバなう」と自分の位置情報を投稿し、今聴いている音楽のタイトルに「#nowplaying」をつけて呟いては一日を溶かしていた。同級生から「私も今近くにいるよ!」と返事が来て合流したり、年齢すら知らないアカウントから「僕もそのアーティストが好き」と同意を得られたり、内と外の両方が接続する感覚は刺激的だった。 かつてのTwitterには、実社会で出会うよりもはるかに気楽でゆるい繋がりがあったのだと思う。ツイートや投稿日時、「いいね」、フォロワー……10年で蓄積されたデータは、自分だけではなく人間関係の軌跡であり、ファイルサイズで計れない重さがある。
Twitterの誕生背景にある「孤独」
このような使い方をしていたユーザーはきっと私だけではないだろう。Twitterは「孤独の解毒剤になる」ことを期待されて生まれたからだ。 書籍『ツイッター創業物語』(日本経済新聞出版社)によると、このサービスは創業者の1人であるジャック・ドーシー氏による「自分が何をしているのかという現況(ステータス)を誰かに共有すると楽しいのではないか?」というアイデアがベースにある。彼の草案を聞いた同僚ノア・グラス氏が「雨降る閑散とした通りで、敗北や失敗の憂鬱な話ができたら、どんなにいいだろう」という具体的なイメージに結びつけ、Twitterは作られた。 どんな音楽を聴いているのか、いまどこにいるのかということを、共有するだけではない。人々を結びつけ、孤独感を癒すことが重要なのだ。パソコンの画面を見つめているときに、どんな世代でも味わうこの感情を、消し去ることができる。 (引用:『ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り』(日本経済新聞出版社) 日本語では「つぶやき」と翻訳されるようになったTwitterという言葉は、「特定の種類の鳥の小さなさえずり」「震えるような小さな声やくすくすと笑う声などの、似たような音も指す」「同様や興奮によるおののき」という意味で、サービスの特徴と可能性をよく表している。 一羽の鳥のさえずりが誰かの孤独を癒やし、いつの間にか輪唱になり、社会を変えていく。Twitterは単なるWebサービスの域を飛び越えていた。
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