静岡空港、国際線復活道半ば 開港15周年 静岡から欧州へ、上海経由の利用促進
静岡空港は6月に開港15周年を迎えた。新型コロナウイルス禍からの回復傾向が見られる一方で、中国路線など国際線の復活は道半ば。コロナ禍を経て観光動向が変化する中、静岡県と富士山静岡空港株式会社は上海を乗り継ぎ地とする利用促進、復便や路線拡大を模索しながら利用拡大の将来像を思い描く。 「大変な時期があったが、乗り越えて今日を迎えられた。利活用を増やし、搭乗率を上げたい」。鈴木康友知事は1日の15周年式典でこう強調し、「空港を一大交流拠点にしたい」と意気込んだ。 2009年6月4日に開港した静岡空港。17年度から搭乗者数は順調に増加を続けた。三菱地所と東急電鉄を中心に民営化した19年度には、73万8千人の過去最高を記録した。 そんなさなか、コロナ感染拡大が直撃し、20年3月からは国際線定期便の全便が運休・欠航に。23年3月、韓国・ソウル線を皮切りに国際線定期便が3年ぶりに再開し、同9月に中国・上海線も復便。24年7月に予定する中国・杭州線の再開までこぎ着けたが、国内線も合わせた搭乗者数は23年度51万3千人と、いまだ回復途上だ。 県空港振興課によると、23年度のソウル線は搭乗者数9万1千人、搭乗率85・0%と好調だった一方、中国路線の回復が遅れた。中国で販売される団体旅行商品が少ないことなどが影響し、上海線は6472人、44・4%にとどまった。コロナ前に就航していた中国と台湾の4路線は運休・欠航が続く。 県は中国人のインバウンド(訪日客)回復を待つだけでなく、上海線のアウトバウンド促進を活路とみる。「静岡からもヨーロッパに行ける」(同課)という認識が県民に周知されていない現状があるからだ。「アジアのハブ空港」の上海で乗り換え、欧州や中東を目的地とする利用のPRに注力する。 コロナ前には23年度に搭乗者数101万人、38年度135万人の目標を掲げた。新規路線就航の開拓を見据え、23年度はベトナムなど複数のチャーター便を飛ばした。同課の小野一課長は「空港同士の競争はリスタートされ激しくなる。まずは過去最多の搭乗者数を超えるように取り組みたい」と力を込めた。 ■近隣市町 問われる利活用策 道の駅新設や存在感アピール 静岡空港の近隣市町の関係者からは「観光誘客や経済振興など目に見える効果にはつながっていない」との声が漏れる。国際便が再開しつつある中、利活用策が改めて問われている。 公益財団法人するが企画観光局が今春に初めてまとめた同空港を利用した訪日客145人への調査。県中部を訪れた観光目的を問う項目への自由回答は「富士山」が60人で最多。近隣市町の名前はほぼ挙がらなかった。 牧之原市は「周辺振興の集大成」と位置づけ、空港に隣接した坂部地区に市内初となる道の駅の建設を進めている。周囲の茶畑の眺望を生かし、観光地として訪日客を呼び込む狙い。地場産品を提供するレストランや農業体験なども構想する。市お茶特産課の担当者は「空港のそばに滞在場所ができるのは大きい。経済効果につなげたい」と意気込む。 島田市では昨年、空港周辺で電動キックボードなどを活用した周遊性を高める実証実験を実施した。「見どころが点在する市内と小回りが利く新モビリティは相性がいい」(市戦略推進課)と手応えを得た。 同市は今後予想される台湾との定期便復活が大きな契機になると捉える。周辺市町と連携し、PR動画制作や同国の人気ブロガーを招いたツアーなどコロナ後を見据えて準備を進めてきた。市観光課の担当者は「旅先として知ってもらわないことには何も始まらない。周辺地域全体で名前を売り出していきたい」と話した。
静岡新聞社