なでしこジャパンはなぜ女子W杯で初優勝できたのか?「常識を超える偉業」を成し遂げる人たちの共通点とは
● 「なでしこジャパン」はなぜ 世界一になれたのか? 2011年にドイツで開催された「FIFA女子ワールドカップ」で、女子サッカー日本代表チーム「なでしこジャパン」が初優勝を成し遂げました。日本のチームがサッカーの世界大会で初めて頂点に立った、この快挙を支えたのも「誰かのために」という思いでした。 その年の3月11日に東日本大震災が発生。東北地方を中心に地震と津波で大きな被害に見舞われました。 「日本中が震災で大変なときに、私たちは海外にサッカーの試合に行っている場合なのか……」 大会を控えて合宿していた選手たちの間にも疑問と葛藤が生まれ、「大会に出場すべきか、辞退すべきか」と喧々諤々に議論したこともあったそうです。 当時のなでしこジャパンを率いていた佐々木則夫監督は、準々決勝のドイツ戦、そして決勝のアメリカ戦を前に、選手たちにある「映像」を見せました。そのときのエピソードを、次のように回想しています。
「ドイツ戦の前に見せたのが『われわれは日本を代表している』という映像でした。何のために、この大会を戦っているのか。それは震災で打ちひしがれた人たちに、われわれが一生懸命ひたむきにプレーする姿を見ていただいて、何とか元気になってもらうためだよね?そのことを、映像を使って再確認することができました。 決勝の米国戦では『次のステージに向けて』――つまり復興ですよね。ドイツには勝ったけれど、そこで収まらずに新しいステージに向かっていこう、というメッセージを込めました」(宇都宮徹壱「2011年の東日本大震災となでしこジャパン 佐々木前監督が語る『あの時考えたこと』」Sportsnavi/2019年3月11日) これが「誰かのために」です。 当初、なでしこジャパンが掲げていた目標は「ベスト4以上に入ってメダルをとる」、そして「一度も勝っていないアメリカに勝つ」ことでした。これらは自分たちがワクワクすること、つまり「自分たちのため」だけの目標でした。 そこに「被災地の方たちを元気づける」という「誰かのために」の要素が加わったことで、なでしこジャパンは次々と強豪国に勝ち、決勝ではアメリカと対戦。PK戦までもつれた激闘を制し、優勝の快挙を成し遂げたのです。
吉岡眞司