浜松発「無花粉スギ」品種、着々 国民4割が罹患「目がかゆい!くしゃみが止まらない!」に朗報
国民の4割が罹患(りかん)しているとも言われる花粉症。静岡県は2008年度から森林・林業研究センター(浜松市浜名区)が花粉を飛散させない「無花粉スギ」の研究開発を続け、一定の評価基準を満たす新品種の数を増やしている。これまでに共同開発を含め8品種が認定を受け、本年度には10品種に達する見通しだ。今後、県内で普及させるためには生産態勢の構築が必要になる。
国内林業でスギは重要な造林樹種。現在、本県を含めて各地で花粉の少ない品種への切り替えが進んでいる。特に、無花粉スギは雄花はつけるが、雄花から全く花粉を出さない。1992年に富山県で発見された後、同県の試験で静岡県のスギの中にも無花粉の遺伝子を持つ、造林に適した系統が見つかった。
将来的な木材利用を見据えると、花粉を出さないだけでなく木の成長や材質などでより良い性質を持つ品種が求められる。同センターはこの系統を活用して人工交配を行い、新品種を開発。18年に国立研究開発法人「森林総合研究所材木育種センター」が設置する優良品種・技術評価委員会で、「静神不稔(しずかみふねん)1号」として優良認定を受けた。
森林・林業研究センターは19、22年にも、主体となって開発した3品種が無花粉スギの品種に加わった。うち22年の1品種はクラウドファンディングを活用して資金援助を受け、開発につなげた。
本県は無花粉スギの品種開発分野で先進県の一角に位置付けられる。一方で、無花粉スギの苗木は挿し木での生産が考えられるが、県内では苗木の生産者が異なる生産方法をとっているため、その体制がないために流通に向けた事業化にはハードルがあるという。
長年、無花粉スギの品種開発に携わる同センターの袴田哲司森林資源利用科長(61)は「研究的には成果を出すことができた。今後、事業として普及拡大につながることを期待している」と活用を願う。
■学校や企業へ苗木無償配布
森林・林業研究センターは新品種を開発する過程で育苗した無花粉スギを有効活用するため、苗木を無償配布している。NPOや学校、企業など団体の活用を想定する。