厚生長官に“ワクチン懐疑派”起用 波紋広げるトランプ流人事…狙いは
日テレNEWS NNN
15日も、アメリカのトランプ次期大統領が次々と打ち出している人事をめぐり波紋が広がっています。この”トランプ流人事”について、日本テレビ・小林史国際部長が解説します。 ◇ ――トランプ氏は14日、保健行政のトップである厚生長官にケネディ元大統領のおいで弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏を起用すると発表しました
ケネディ氏を一言で言えば、「ケネディ家の異端児」です。国民的人気を集めたケネディ元大統領は民主党の政治家でしたが、おいのケネディ氏は、今回の大統領選では民主党からではなく無所属で出馬していました。 結局は途中で撤退し、直後に共和党候補のトランプ氏の支持に回っていたのです。 ――これまでの人事のように「忠実なトランプ支持者」を起用したということではないわけですね これまでの一連の人事とはやや性格が異なるところです。ただ、厚生長官というのは、全米の保健行政を統括するポジションで、その権限は絶大です。 たとえば、医薬品の認可などを担当するFDA=食品医薬品局や、コロナ禍で私たちもよく耳にしたCDC=疾病対策センターなどを管轄下においています。米メディアによると、連邦予算のおよそ25%を占める巨大な組織のトップに就く可能性にあるというわけです。 ――ケネディ氏といえば、反ワクチン論者でも知られていますが、その人が厚生長官に就くということはどう受け止められていますか ケネディ氏はコロナワクチンをめぐって、根拠のない陰謀論を広めたり、「自閉症はワクチンが原因だ」と発言したりするなど、科学に基づかない主張を繰り広げてきました。さらに、ワクチンを認可するFDAを敵視していて、FDAそのものを解体すべきだとも主張してきました。
こうしたことに対しトランプ氏も選挙前、ケネディ氏に「Go wild」=「好き放題やれ」と伝えていたということです。もし厚生長官に就任したら、かなり大胆な組織改革などを行うとみられます。 ――国民の健康や医療政策にも大きな影響が出そうでしょうか ケネディ氏は、アメリカの最先端の医療機関や研究機関の予算を大幅に削り、代わりに自然療法や予防医学などにより重点をおく考えを示しています。 そうなると、ワクチンや医薬品の開発に影響が出るなどする可能性もあります。 さらには、自然科学の分野で世界最高水準を誇るアメリカの研究機関などから優秀な人材が流出する懸念なども指摘されています。一部の米メディアは、「国民の健康に信じられないほどのリスクをもたらすだろう」と警鐘を鳴らしています。 ――トランプ氏がそのような考えのケネディ氏を厚生長官に起用した狙いは 1つには、ケネディ氏の知名度の高さがあると思います。ケネディ氏は今回の大統領選に無所属で立候補しました。米・キニピアック大学が今年8月に公表した調査結果によると、撤退前には全体の4%の支持を集めるなど、第3の勢力として一定の支持を集めていました。 もう1つの理由は、トランプ氏による「共和党への挑戦」だと思います。 今回の一連の人事は、身内の共和党からも驚きをもって受け止められています。本当にこれでいいのかと懸念や反発の声も上がっていて、上院ですんなり承認されるかは全くの未知数です。