「鹿児島からサラブレッドの灯は消さない」薩摩の地に息づく馬文化 若きサラブレッド生産者の挑戦
サラブレッド第1号の馬主決まる
堀脇さんの牧場で生まれた最初の子馬は生後3カ月で、競りではなく馬主が直接買い付けに来た。 「サツマフジ」と名付けられた堀脇牧場産のサラブレッド第1号を購入したのは、鹿屋市でサラブレットの育成や調教を行う伊東牧場のオーナー・伊東政清さん(83)だ。 伊東さんは「いいお尻をしていて楽しみだなと。即決でした」と購入の決め手を語る。 「サツマフジ」は、2025年の春先まで伊東牧場でトレーニングを続け、その後は関東の厩舎(きゅうしゃ)に所属して、JRA(日本中央競馬会)でのデビューが予定されている。 順調なスタートを切ったかに思える堀脇さんだが、馬の生産は決して楽な道のりではない。 「餌をカットしたのだけだと、食べるスピードが速すぎて食べすぎちゃう。1日中、草を食(は)んでいる体の構造だから、それも元にやりなさいと教科書に書いてあった」と苦笑いしながら、マニュアルを頼りに日々奮闘している。
“競馬ブーム”が後押しする新たな風
近年、鹿児島県内のサラブレッド生産頭数は上昇傾向にある。 2023年までの10年間、10頭台の時期もあったが、ここ数年は30頭を超えている。全国的にも増加傾向にあるそうだ。 JRAの関連団体で責任者を務める中村北斗さんは、その要因の一つに競馬の好調な売り上げを挙げ、「コロナ禍で外出ができなかったり、娯楽が乏しかった時に馬券投票がネットで盛んに行われるようになった。エンタメとして競馬に興味を持ってもらった」と説明する。 さらに、競走馬をモチーフとしたキャラクターが登場するゲーム「ウマ娘プリティーダービー」のヒットも、新しいファン層の獲得を後押ししているという。 そうした中、堀脇さんのような若い生産者が登場したことについて、中村さんは「業界的に後継者問題が常に付きまとうので、若い新しい風が入ってくるのはいい傾向」と高く評価する。
サラブレッドの灯を次世代につなぐ
堀脇さんの牧場にいる母馬エリザベスギフトのおなかには、2025年に生まれる赤ちゃんがいる。 「歴史あるものなので自分らの代で終わるのも嫌なので、先輩たちが今までつないできたものを下の代にもバトンパスができるように続けることが大事」と話す堀脇さんは、「鹿児島からサラブレッドの灯は消さない」と鹿児島で馬産を続ける意気込みを語る。 薩摩の地で育った馬が、いつの日か大きなレースを制する日が来るかもしれない。鹿児島の若き生産者の挑戦は、まだ始まったばかりだ。 (鹿児島テレビ)
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