「人材雇用を破壊したのは誰だ」非正規雇用、外国人労働者、価格崩壊で弱体化する現代ニッポン
続く〝身分差別〟
──それでは、解決に向けてはどのようなことが必要なのでしょうか? ロスジェネ世代の問題があります。 小林 雇用については、例えばもう「9割は正社員」ということに戻すべきだと思います。正社員でなくても、社会保障はきちんとするとか、同一賃金同一労働を徹底する。安定した雇用のもと、いろいろな力を身につけるような土壌を作らないと、日本は立ち行かなくなります。 ロスジェネは極めて深刻な問題です。なぜなら、彼らはあと10年もすれば60代に突入します。就職支援だけではなく、健康を維持することも考えないといけない。健康を崩して働けなくなれば生活保護に直結します。だから、いますぐにでも、雇用が不安定なロスジェネ世代の調査を徹底してするべきです。 山田 僕も契約社員をやってみて一番腹立たしかったのは、「同じことやっても給与の額が違う」ということですね。確かに、身軽なポジションでいつでも辞められるし、嫌だったら職場を移れるというのは、僕みたいな性格の人間にとっては悪いことじゃない。でも、そうじゃない人もいる。やっぱり同一賃金同一労働っていうことは実現する方向にしてほしい。 それから、労働者としての「言葉」というか、職場での「発言権」を大切にしてほしい。非正規には、それがないんですよ。仕事はたくさんさせるのに、「この仕事のやり方をちょっと変えたらいいじゃないですか」と提案したら、「派遣の人は別にそういうのはいいから」と言われてしまう……。 ある種の〝身分差別〟です。多くの派遣の人がそう思っているのではないかと思います。やっぱり、雇用形態にかかわらず、対等に喋れるというカルチャーを作っていかないと、それがないとみんなね、結局その会社は企業の力を高めるために人件費を節約したつもりかもしれないけれども、働く人間は間違いなく意欲を失います。 出井 「労働人口が減っていくので、外国人で補わないと、今までのサービスが維持できなくなりますよ」と、脅迫するような論調が目立ちます。 低賃金の労働力を欲する産業界がそう言うのはわかりますが、そこにはメリットとデメリットがあることも考えなければならないと思います。 例えば、いわゆるリベラル派は「多文化共生」だから、外国人労働者の家族帯同を認めてあげましょうと主張します。そんな美しい理念、美しい言葉は世論を味方につけますが、外国人労働者を安易に移民にした結果、社会にツケを回すことになりはしないのか。日本に連れてこられる配偶者や子どもは日本語が全くできません。そもそも労働者本人からして上手くない。日本語ができなくても、食品製造工場などのように働ける職場はいくらでもありますよ。でも、親の都合で日本に連れてこられた子どもたちが、幸せに暮らせる環境が整っているのでしょうか。 小林 おっしゃる通りで、小学校、保育園など、負担は現場に押し付けられるだけですね。 出井 そうなんです。どこまで外国人頼みを進めるのかという問題もあります。台湾では、介護の仕事は外国人しかやりません。そんな状況を日本でもつくるべきなのか。きちんと議論する必要があります。 小林 コンビニの店員は外国人ばかりなので、子どもたちがそこで働こうとは思わないといった影響が出てくるかもしれませんね。