古墳探しやインフラ点検…3D点群データの活用広がる「課題解決やビジネス創出のチャンス」
デジタル空間に街並みや地形をリアルに再現できる「3次元(3D)点群データ」の活用が進んでいる。立ち入りが困難な場所でも現地の状況を正確に把握できる利点があり、山間部での遺跡探索や防災、老朽インフラの点検などにも役立つ。人手不足が深刻化する中、重要性が高まりつつある。(土谷武嗣) 自治体が公開する3D点群データの活用例
点群データは、約10年前から主に国や都道府県が河川や山間部の地形を把握するために作成しており、5年ほど前から誰でも自由に使えるオープンデータとして公開する自治体が出始めた。大阪、兵庫、静岡など、少なくとも7都府県がデータを公開。石川県は一般には公開していないが、商用目的でなければ、申請を受けて提供する。
このデータに着目し、未知の古墳を探す試みを始めたのが、奈良文化財研究所(奈良市)だ。
古墳は実地での調査が原則だ。山間部は入るのが容易でなく、見つかっていない古墳が多数あると考えられている。そこで、同研究所主任研究員の高田祐一さん(41)らのチームは3年前から前方後円墳や円墳といった古墳の形状を人工知能(AI)に学習させ、公開されている兵庫県の点群データ上でそういった形状の場所がないかを探させている。
昨年、研究員らが候補地として抽出された同県豊岡、たつの両市の山間部を現地調査すると、古墳や寺院跡など計35か所の遺跡が見つかった。高田さんは「自治体など他の機関ともノウハウを共有し、遺跡を効率的に発見し、地域の歴史の解明につなげたい」と話す。
被害把握
データを作成した自治体では、防災分野で活用するケースが目立つ。
静岡県は2020年から活用を進めており、21年7月の熱海市の土石流災害では、現場の地形を点群データで分析。崩壊した土砂量を推計し、被害拡大の原因を把握した。今年1月の能登半島地震でも石川県から提供を受けた点群データと被災後の航空写真を比較し、山間部での被害や沿岸部の隆起状況などが確認できるデータを公開。復旧作業などに役立てられている。