貸金庫窃盗、強盗、インサイダー取引疑惑…相次ぐ金融業界の不祥事 担当記者が解説
2024年は金融業界の不祥事が相次いだ。インサイダー取引疑惑 、取引先脅迫、中には人命にも関わりかねない重い事件も…。 【映像】三菱UFJ銀行の頭取が頭を下げ謝罪する様子 テレビ朝日の経済部金融担当の髙瀬幸介記者が、衝撃的な事件について振り返った。
■野村証券社員、顧客眠らせ約2600万円奪い放火
11月に野村証券社員(営業29歳男/懲戒解雇)が、広島市内の顧客の80代夫婦宅を訪問。食事中に睡眠作用のある薬物を混入させ、昏睡させて現金2600万円を奪い、放火した。その後、被害者は目が覚めて逃げることができた。 ━━ この事件についてどう思うか。 「野村証券の事件は前代未聞だった。顧客の信頼性を悪用して、老夫婦のところを訪れて、睡眠作用のある薬物を食事に混入させて現金を奪う。それだけにとどまらず、放火をして逃げた。被害者は目を覚まして無事だったが、当然、犯人は強盗殺人未遂、放火の罪で逮捕、起訴された。動機については「投資でできた損失を穴埋めするために現金を盗んだ」などと話している。 野村証券は言わずと知れた証券業界の最大手で、 富裕層に強みがある。高齢者の顧客、その安心というところを相手にした大胆な犯行だった。金融機関というのは、我々一般の人間から見ても、信頼の高い職業。その信頼を裏切るという行為においては非常に重たい事件だ」
■インサイダー取引の疑いで刑事告発・起訴
10月に金融庁出向裁判官(32歳・懲戒免職)が職務上知った株の未公開情報を元に数百万円の利益を得た疑い。 ━━ この事案についてはどうか。 「裁判官は法の番人だ。何がいけないか、1番熟知しているはずの人間が、よりによって金融庁に出向しているときに起こした。これは非常にダメージの大きい話だ。裁判官の男は、懲戒免職されているから、元裁判官となる。懲戒免職で公務員、裁判官という肩書きはなくなったが今度は被告人の証言台に立って裁かれる非常に皮肉」
■三菱UFJ銀行、貸金庫で巨額窃盗の衝撃
40代課長職の女性行員(懲戒解雇)がスペアキーを管理する立場で貸金庫を開けて金品、現金など十数億円を窃盗。被害可能性の高い60人のうち20人弱に約3億円をすでに補償している。 ━━ 貸金庫のセキュリティはどうなっているのか。 「銀行の貸金庫に入ったことはないが、会員制の貸金庫業者を取材したことがある。そこは銀行とは違うセキュリティではあるが、電子キーや、2重、3重のロックがしてあって、非常に厳しい。銀行と同じく予備の鍵があるが、銀行と全く同じで専用の封筒に入れて、封をして割印をする。銀行はまさにそれをやっていたのに、女性行員はなんらかの方法で破ってスペアキーを使っていた」 ━━ 会見では頭取が謝罪をしたが、発覚からどのように見ていたか? 「発覚の際は目を疑う内容だった。発覚後すぐに頭取が、カメラの前でひと言でも謝罪や経緯説明などしないのかは、気になっていた。『会見をやった方がいいんじゃないか』という話は三菱UFJ銀行側には伝えていて、彼らにもそういった声は少なからずあったのは聞いている」 ━━ 頭取が出てくること自体、珍しいことなのか。 「メガバンクと言われるような大きな銀行で、頭取が会見の場に出てきて、頭を下げるのは極めて異例だ。それぐらい重い事案だと受け止めてくれればと思う。取材を進めていくと、関係者から聞こえてくるのは「何もやらなくていいと思っていたわけではない」ということ。 逡巡している場面もあり、結果的に会見まで1カ月近く空いてしまった。先ほど話が出た野村証券の事件では社長が会見した。その流れを受けて、やはりSNS上では『三菱UFJはやらないのか』と。そういった声を目にしていたのは聞いていた。それで会見は当然やるのかなという方に流れていった印象がある」 ━━ 今後、警察の動きはどうなるか。 「銀行としては10数億円相当が盗まれたと認識して発表した。これは女性行員も認めてることだが、刑事的な事件として扱うかは、別の話になってくる。事件として立件するには、被害届が必要になる。ここで貸金庫という特性が絡んでくるが、誰が何を入れたかを銀行側は一切関知しない。盗まれた側も、何が盗まれたのか、本人の勘違いではないのか、などの裏付けをしないといけないから大変だと思う」 ━━ 貸金庫に何を入れてるか、明かしたくない人もいるのか。 「何を入れているかバラしたくないから貸金庫に入れているという人もいる。貸金庫業者に取材で聞いたことだが、基本的に貸金庫は、有価証券や株式、印鑑を入れることを想定している。しかし最近は、趣味で集めているレアなカードを入れる人もいるらしい。もし、家族にも知られてたくないという時には一体どうするのか難しい」 (ABEMA NEWS)
ABEMA TIMES編集部