建物の外壁に集まっていたツヤアオカメムシ＝山形市香澄町

　つやつやした緑色の見慣れぬカメムシが、山形市で大量発生している。9月から県内中で目撃事例が相次いでおり、その名を「ツヤアオカメムシ」という。生息域は関東地方以西で、本県を含む東北地方で確認されるのは珍しい。専門家は「台風や前線の風に乗ってやってきたのではないか」と推察している。 　秋風が吹く中、ネオンサインが輝く山形市内の繁華街では、街灯に舞い、建物の外壁にへばりつく無数のツヤアオカメムシが確認できた。同市香澄町の船山書店は一時期、店の中に入ると臭うため、普段は開放している店舗入り口を閉めて対策していた。 　船山隆幸店長（64）は、殺虫剤をかけて駆除しようとしたが、嫌な臭いを発したため断念した。「ペットボトルですくうといいと聞いたが、大量にいると手間がかかる」と困り顔。一頃より沈静化したが、再びの群舞を懸念している。 　病害虫の農作物への影響を調べる県病害虫防除所（山形市）によると、同所の敷地内で9月初旬ごろ、今年初めて確認され、同下旬から今月初旬にかけては、ほぼ全県的に目撃されている。光に群がる習性があり、夜に発見されるケースが多い。果物の種などが好物だが、農家から果樹に張り付いていたという報告は入ってきていないという。

つやのある緑色のツヤアオカメムシ

　同所の高部真典業務課長によると、ツヤアオカメムシは常緑樹の葉の裏などで越冬するというが、寒さに弱いため、本県では一冬を越せない可能性が高いとする。「風に運ばれて飛来したとしか考えられない。防除が必要なのかも含め、慎重に見定めたい」と語った。 専門家「個体数と降雪量、関係性ないはずだ」 　山形県民に広く伝わる伝承に、「秋にカメムシが多いと、その冬は雪が多い」という話がある。ツヤアオカメムシの大量発生は今冬に影響するのか。県病害虫防除所の高部真典業務課長は「カメムシの個体数と降雪量に相関関係はないのではないか」と話す。 　県内で一番生息数が多いカメムシは茶褐色の「クサギカメムシ」。越冬場所が人家といった建物の中のため、この性質が伝承の由来に結び付いている可能性がある。コメの品質に悪影響を及ぼすのは斑点米カメムシ類で、クサギカメムシとは異なる。 　防除所の昨年秋の調査では、クサギカメムシの個体数は多かったが、山形市内は少雪だった。今夏も、例年より個体数が多かったという。高部業務課長はこの結果から、カメムシの個体数と降雪量の関係性はないと考えている。「ツヤアオカメムシはそもそも本県にほぼ生息しておらず、雪との関係もないはずだ」と語った。