<センバツ2022・ともに咲く>広島商/上 合言葉は「できる」 何事も諦めない「心づくり」 /広島
第94回選抜高校野球大会への出場を決めた広島商。春夏7度の全国制覇を誇る伝統校が20年ぶりにセンバツの舞台に帰ってくる。昨秋は県大会を24年ぶりに制し、中国地区大会で準優勝を果たした選手たちは「できる、できる」を合言葉に、甲子園でも躍進を誓っている。 「捲土(けんど)重来、常勝広商は俺達の時代から」「俺たちの広商野球の創造」「甲子園出場そして全国制覇する」。野球部の部室に置かれたA3サイズの1枚の用紙には、2021年7月に野球部員が話し合って決めた新チームのテーマや目標が記してある。行き詰まった時などに立ち返る、今年のチームの「原点」がそこにある。 目標達成への道筋も書かれ「心づくり」「技づくり」「体づくり」を三つの柱に、レベルアップには何が必要か千数百字にわたってつづられている。「力を最大限引き出す『心』あってこそ『技・体』が発揮される」と、特に重視しているのは「心づくり」だ。 何事も最後まで諦めない心を培おうと、練習中に選手同士が掛け合っている合言葉が「できる、できる」。どんなに苦しいトレーニングであっても限界を自分で決めず、一本でも多くダッシュし、一回でも多くバットを振り抜くことをおのおのが自分に課し、練習してきた。 「心づくり」が特に結果に現れたのが10月の中国地区大会準決勝での倉敷工(岡山)戦。七回まで打線が5安打に抑えられ、2―5とリードを許す苦しい展開だった。しかし、ベンチで選手たちは下を向かず、合言葉を連呼していた。4番を打つ広本真己選手(2年)は「おまじないみたいにずっと口に出していたので、自然と『逆転できる』としか思えなくなっていた」と振り返る。 迎えた八回裏の攻撃で、先頭の広本選手が右前打で出塁して勢いに乗った打線はつながり、代打・竹下偉磨琉(いまる)選手(2年)の逆転の2点適時打など打者一巡の猛攻で一挙に7得点し、結果は9―6。最後まで諦めない姿勢が呼び込んだ勝利だった。 粘り強い戦いでセンバツへの切符をたぐり寄せた秋の選手たちの成長に荒谷忠勝監督(45)は「気持ちでは負けないという強さを見せてくれた」と目を細める。植松幹太主将(2年)は「自分たちが進もうとしている道は正しいんだと結果も示してくれた」と自信をのぞかせる。この冬も選手たちは合言葉を連呼しながら「心・技・体」のさらなるレベルアップを目指す。【池田一生】=次回は8日