米メディアが注目 88歳の日本人デイトレーダー、午前2時に始まる銘柄選び
弟子入り志願者も
藤本は3台のモニターを駆使してデイトレードを行う一方で、電子メールは使わず、スマートフォンや自動車、クレジットカードも持たない。 ソーシャルメディアなどでは「日本のウォーレン・バフェット」と呼ばれることもあるが、バフェットと比べられるのは恥ずかしいとし、「似ているのは年齢と、株式が好きということやろな」と言う。若年層が投資を行うことについて良いことだと考える藤本の元には、弟子入りを志願する連絡が来ることもあるという。 T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、藤本について「相場への意気込みを非常に感じる」とし、熱量は機関投資家と大差ないだろうと指摘。「世の中への影響は大きく」、投資の着眼点といった部分で藤本に追随する動きは個人投資家の間で一定程度あるのではないかと述べた。 日本証券業協会が2022年に実施した調査では、株式の平均保有期間が1ヵ月未満の個人投資家は全体の約3%にとどまる。藤本の若者へのアドバイスは、「良い株を長期で持つこと。利益が伸びている会社、一生懸命仕事をする会社、一生懸命投資をする会社が良い会社だ」。
ペットショップと雀荘を経営
ペットショップに勤めていた19歳の時、証券会社の役員から勧められたことが投資を始めるきっかけだった。初めて購入したのは、早川電機工業(現シャープ)や日本石油(現ENEOSホールディングス)といった銘柄だ。 当初は株式投資に専念していたわけではなかった。インコ好きの藤本は、ペットショップを開店し、その後、売却。雀荘の経営を始めた。1986年に雀荘3店舗全てを計6500万円で売却し、専業投資家に転身した。 飼っているインコの「ピーちゃん」を頭にのせて株式の売買を繰り返す藤本は、投資で人生をより楽しむことができていると話す。「頭を使いながら体も使い、コインを稼いでいる」。ただ、長年の投資生活で築いた約20億円という金額については「不満だらけ」だと言う。 「努力が足らない」。売買の記録を一つずつ「銘柄ノート」にボールペンで書き留めながらぼそりとつぶやく。「なるべく欲を出さずに、利益を残さないといけない。欲を出したらあかん」。
Yasutaka Tamura