ショッピングモールや駅で「礼拝室」が増加中 異なる宗教、文化への関心呼び起こしのきっかけに
アジアの訪日客増で迫られる対応
そもそも礼拝室が増えてきた理由は何だろうか。背景には、インドネシアやマレーシアなど、イスラム教徒の多い国々から訪日する人が増えていることがある。 イスラム教徒の多い国といえば、エジプトやモロッコ、サウジアラビアなどのアラブ諸国を思い浮かべるかもしれないが、最も多いのは、2億人以上のイスラム教徒が暮らすインドネシアだ。上位20カ国には、実は中国やマレーシアも入っている。 これらの国々からの訪日客数は増加傾向にある。日本政府観光局が今年1月に発表した2019年の統計によると、インドネシアからは年計で初めて40万人、中国は初めて950万人、マレーシアからも初めて50万人をそれぞれ超えた。 インバウンドだけでなく、製造業の集積地である愛知県では、外国人労働者数も、厚生労働省愛知労働局の統計によると2013年から右肩上がりに増えている。それぞれ宗教は異なるだろうが、当然その中にはイスラム教徒もいる。社内に礼拝場所を設けた受け入れ企業もある。技能実習や、昨春から新設された在留資格「特定技能」によって、今後も企業で働くイスラム教徒は増えていきそうだ。 世界をみれば、イスラム教徒は2015年時点で世界人口の約24%となり、約4人に1人の割合。イスラム教徒の人口も訪日する人も増えている今、これまでは見かけなかった、宗教に配慮した施設が身近なものとなってきた。 このようなハード面が整いつつある一方で、イスラム教に対する偏見や間違った情報も少なくない。 「誤解されるのは悲しいこと」だとサラさんはいう。否定的な先入観を持たれると、「イスラム教徒は遊びや食事に誘われにくくなります。宗教に関わらず、過ごしやすい日本であってほしいと願わずにはいられません」と訴える。 増えつつある礼拝室は、異なる宗教、文化への関心を呼び起こし、お互いに理解し尊重する姿勢を持つきっかけになるかもしれない。 (南由美子/nameken)