窮地に追い込まれ、戦慄の決断を下す…皇帝・プーチン大統領「NATO包囲網で核兵器投入」の現実味
旧ソ連の独裁的指導者スターリンの29年を超えることになった。3月17日開票の大統領選で通算5期目の当選を果たし、首相時代を含めると30年に及ぶ超長期政権となるロシアのプーチン氏(71)だ。 母親は「大統領の精子を全てのロシア人女性に」と驚愕発言…プーチン「新恋人」美しき素顔写真 〈投票率77.4%、得票率87.3%〉 いずれもロシアで実施された大統領選では過去最高の数字である。プーチン氏は、本当に国民から圧倒的支持を得ているのだろうか。ロシア情勢に詳しい筑波大学名誉教授の中村逸郎氏は懐疑的だ。 「反政権的な人物が書類上の不備を指摘され選挙前に排除されるなど、実質プーチン氏が唯一の立候補者でした。スマートフォンのアプリで個人の携帯電話番号と投票所の場所がヒモづけられ追跡可能となり、国民に他の選択肢はなかったんです。北西部アルハンゲリスク州では、投票率を上げるため賞品が用意されました。抽選でマンションや自動車、電化製品がもらえるんですよ。今回の大統領選は、なんでもありの状況でした」 プーチン氏はウクライナ侵攻について「国民から圧倒的な支持を得ている」と公言してきた。前回(’18年)の得票率76.7%を下回れば説得力を失うため、「圧勝」を演出したかったのだろう。だがウクライナ情勢も、開戦から3年目を迎え膠着状態にある。東京大学先端科学技術研究センター准教授の小泉悠氏が語る。 「ロシアが今年の初めから優勢とみられますが、圧倒的に勝つことはできていません。ウクライナも苦戦しつつ、まだ抵抗できている。ロシアは戦争を引き延ばし、ウクライナや支援国が音を上げるのを待っているのではないかと思います」 さらにロシアを窮地(きゅうち)に追い込んだのが、北欧フィンランドとスウェーデンのNATO(北大西洋条約機構)への加盟だ。 「ロシアとフィンランドの国境は約1350㎞におよびます。中立政策をとっていたフィンランドのNATO加盟で、ノーガードだった長い国境を守らなければならなくなる。従来はウクライナやベラルーシ方面を西部軍管区と一まとめにしていましたが、今年から二つに分割しました。フィンランドとスウェーデンに対応してのことでしょう」(小泉氏) 不気味なのはプーチン氏が最近、演説やメディアの取材で「核兵器投入」について言及していることだ。 「(NATOによる)ロシアへの新たな介入は、核兵器による大規模な紛争を引き起こす恐れがある」(2月29日) 「ロシアの核兵器はどの国よりも最新で戦争の準備はできている」(3月13日) 核使用をちらつかせたプーチン氏の脅しともとれるが、実際に投入される現実味もはらんでいるという。 「ウクライナが優位に立てば、ロシアは『ヨーロッパへの南の港』黒海を失うことになります。さらに北欧2ヵ国のNATO加盟で『北の港』バルト海を喪失することになる。ロシアにとってNATOが東へ進出するだけでなく、二つの海を失う大ダメージです。ロシアには、カリーニングラードというバルト海に接した飛び地があります。プーチン氏が『北の港』を死守するため、そこに配備されている核ミサイルを北欧2ヵ国に発射する危険性があるんです」(中村氏) 日本も他人事ではないという。 「ロシアの最大の脅威は米国でしょう。米国の軍事力を分散させるために、ヨーロッパから東アジアへ目を向けさせるかもしれません。5月の大統領再就任後、プーチン氏が比較的早期に訪問するのは最友好国・北朝鮮と思われます。金正恩総書記をけしかけ、日本や韓国にミサイル攻撃させる可能性がある。そうなれば核の使用も否定できないんです」(中村氏) 30年の統治で独裁者となったプーチン氏。追い詰められた「ロシアの皇帝」が「核のボタン」に手を伸ばしつつある。 『FRIDAY』2024年4月5・12日号より
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