インフレ進めば日経平均10万円の時代? TSMC進出で価格高騰の町、周辺で“格差”も…「マイナスよりプラスのほうが大きい。成功する人は虎視眈々と狙っている」
吉野家の牛丼1杯の価格は、日本が468円、アメリカは約1500円。藤野氏は「日本もアメリカに近づいていくだろう。しかし、10年かけて1杯1500円になったとして、アメリカは3000円ぐらいになっているはず。まだ日本は安いという状況だと思う」との見方を示した。
■TSMC工場の隣町の唐揚げ店はなぜ経営苦?
TSMCが来た菊陽町の隣町にある唐揚げ店「自慢の塩からあげ専門店 空和 大津総本店」。バブルの影響で家賃が高騰するなど、経営に苦労しているという。店主の坂田英樹氏は「2月からいきなり家賃が倍に上がった」。さらに、道路拡張工事のため廃業・移転・休業を迫られているという。
客が減少するおそれから値上げができず、約900円のアルバイト時給も上げられないため、働き手も集まらない状態。TSMC工場の食堂スタッフは時給1500円、今後は3000円を超えるとも言われ、「やはり時給を見て判断される。今は募集を諦めている」と明かす。
藤野氏は「同じようなことが起きているのはニセコ地域で、外国人を中心に非常に賑わっている。全て外国人価格になっていて、弁当やラーメンが3000~4000円。価格を上げられなかった会社は撤退しているので、勇気を持てるかどうかが重要なのではないか」と指摘した。
店では弁当を550円から販売している。坂田氏は「1つ1000円ぐらいの値段をつけていくことも考えてはいる。そういう時代にしていかなければならないなと、地域の飲食店みんなで意識を高めていくべきだと思う」とした。
■「倹約をすることが良い時代ではなくなる。マインドセットの切り替えを」
今後インフレが加速していくことで、格差が生まれていくのではないか。藤野氏は「大事なことは労働者の行動だ。人生を自分で切り開くために、“給料を上げてください”、もしくは“給料を上げるような体制にするためにビジネスを抜本的に変えましょう”と要求し、受け入れられなければ転職する。アメリカの賃金が上がっていったのは、そのスパイラルが強く働いてきたからではないか。インフレが急激に起こると対応できない中小などは苦しいが、そこはビジネスマインドが必要。戦後に大きく成長したような気持ちが今こそ大事だ」と述べる。 また、「デフレ時と違って、倹約が良しとされる時代ではない。その“勝ちパターン”が通用しなくなることをよく理解して、自分たちの行動を変えなければいけない」と投げかけた。