舛添都知事の辞任で立ち消えか!? 目玉政策だった“多摩振興”の今
観光活性化狙うが…大学の都心回帰が打撃 高齢化進行
そうした状況も踏まえて、舛添前知事は、多摩に新しい産業を生み出すことを試みていました。舛添前知事が都知事に着任した当時、奇しくも訪日外国人観光客が増加していました。多摩には外国人観光客に人気の高い高尾山があります。高尾山はアクセスもよく、都内から日帰りも十分に可能です。そうした観光産業を活性化させようと、東京都は多摩の観光PRに力を入れたのです。 「多摩をPRしたことで、観光客は大幅に増えました。それでも、まだ観光が大きな産業に育っているとは言い難い状況です」。(同) 東京都が力を入れる多摩振興ですが、近年は都心回帰の風潮が強まっていることもあって、思うような成果が出ていません。特に、大学のキャンパスが都心に移転する事態が相次いだことは、多摩に大きな打撃を与えました。大学移転によって若年人口が減少し、高齢化が急速に進行したからです。 現在、多摩地域の人口は約400万人。大半は、高度経済成長期にニュータウンへと引っ越してきた住民です。そうしたニュータウンに住む人たちは、いまや高齢者になりました。そのため、多摩ニュータウンは“オールドタウン”などと揶揄されることもあります。住民が高齢化すれば、多摩の企業多摩に進出は鈍化します。そして、街の活気も失われるのです。「23区では、民間事業者が積極的に商業施設をリニューアルし、マンションの建て替えをするなど、民間によるインフラ更新が頻繁におこなわれています。しかし、多摩地域ではそうした動きは鈍く、インフラ更新が多摩の重要な行政課題になっています」(同)。 今般、地方の過疎化が議論されるようになっていますが、多摩地域も他人事ではありません。舛添都政で未完に終わった多摩の振興。次の都知事を選ぶ、ひとつの指標にしてみるのもいいかもしれません。 小川裕夫=フリーランスライター