五輪銅の清水聡が“消える左”で4度倒して世界へ
プロボクシングのOPBF東洋太平洋フェザー級タイトルマッチが3日、後楽園ホールで行われ、王者のロンドン五輪銅メダリスト、清水聡(32、大橋)が、無敗の元同級ユース王者の挑戦者、上原拓哉(23、アポロ)から計4度もダウンを奪い、3ラウンド1分26秒にTKO勝利し、4度目の防衛に成功した。大橋秀行会長は来年にも世界挑戦にGOサイン。フェザー級にはWBA世界スーパー王者のレオ・サンタクルス(メキシコ)が君臨するなど激戦区だが、清水は五輪メダリストの自負を胸に世界へ挑む決意だ。 もうローカルタイトルは“卒業”でいい。 2ラウンド。“消える左ストレート”が炸裂した。 「わからんかった。気づいたら倒れていて。もう足ががくがくだった。1枚も…3枚も相手が上だった。強かった…」 大阪のアポロジム所属で、沖縄出身の上原が、試合後、うなだれて、ふりかえったパンチ。 打った清水も「当たると思っていなかった」。 「右のジャブ、ジャブと続けて、左をちょっと外から打った。向こうも見えていないんだろうけど、こっちも力が入っていない。そういうパンチってスコーンと抜けて手ごたえがないんです。でも、その分、見えていない相手は倒れるし、こっちのパンチもキレる」 計算ではなく、無我の境地の左ストレート。 これがすべてだった。 上原は立ち上がったが、さらに左を浴び倒れ、右のジャブを出会いがしらに打たれてつんのめって3度目のダウン。 前日、沖縄出身の元WBC世界フライ級王者、比嘉大吾からラインで激励された“沖縄魂”で、3度、ファイティングポーズを取り続けたが、もう清水の独壇場だった。 「ガードの上からでも当たればひるむと思った」と、清水が派手なモーションから思い切り右を2度、3度、振り回すと、後楽園ホールがどっと沸く。 さすがにそこまで大きなパンチは外されたが、続く3ラウンドに右のフックから左のストレートのコンビネーションで挑戦者をコーナーに腰から沈めると、レフェリーは、すぐにカウントを取ることを止めた。 「右がガツンと来たと思ったらもう左が飛んできていた」 上原は立ち上がることができなかった。 これで8戦8KO。プロデビューして2年だが貫禄十分。 大橋会長が「まるで10年いるみたい」と声をかける。 「まだ8戦目ですが、長年やっているように感じる」 ガードを下げて、空手のような独特の構えから、仁王立ちのままプレスをかける異色のスタイル。 「テンポを上げると焦ってしまうので、わざと、のらりくらり、体と心を連結させて、省エネ。無駄な動きをはぶいてパンチをもらわないのが一番いい」 その“のらりくらり”のボクシングが上原を幻惑させた。 「足を使ってサイドから組み立てる作戦でしたが、距離がまったくつかめなかった。遠いんですよ」