映画「本心」、原作にほれ込んだ主演の池松壮亮が映画化に尽力…AI元年の記録「自分事」として
AI(人工知能)技術で亡き母をよみがえらせる平野啓一郎の同名小説が原作の「本心」が8日に公開される。主演の池松壮亮が原作にほれ込み、映画化に尽力。AIの脅威論も叫ばれる中、「(AIが)人間を創造する時代に踏み込み始めた。世界的なトピックを扱った文学作品を映画として見てみたい」との思いで挑んだ。(木村直子)
コロナ禍でまとまった時間ができた時に原作を読み、衝撃を受けたという。「テクノロジーや貧困、格差、災害など、私たちにとって身近な課題がもう少し加速した時代が描かれている」
まず「ぼくたちの家族」(2014年)以降、複数の作品で協働してきた石井裕也監督に原作を読んでもらった。石井監督も幼少期に、母と死別している。喪失感と孤独を抱えながら、移り変わる世界に向き合う主人公の姿が「石井監督がこれまで描いてきた『家族』というテーマとリンクした」と振り返る。
遠くない未来の日本。工場で働く朔也(さくや)(池松)は仮想空間に任意の人間をつくるサービス「VF」(ヴァーチャル・フィギュア)を利用し、死別した母(田中裕子)と「再会」する。母は生前、合法的な自死「自由死」を選んだ。その本心を探るため、母の同僚で親友だった三好(三吉彩花)に接触する。
田中は、朔也が専用ゴーグルを介して見る仮想空間のVFという難役を試行錯誤しながら演じた。池松は原作を読んだ時、田中が演じる母親のイメージが真っ先に浮かんだと言う。「笑ったり、泣いたり。田中さんが人間的な感情を表すほど、AIに見えてくる。(その不思議さに)毎日震えるような感動があった」と初共演を振り返った。
AI技術を搭載したVFの母は、コミュニケーションなどを通じて情報を学習するほど、ぎこちなさがなくなり本物に近くなる。朔也の亡き母を追い求める心は、母の素顔を知る三好との奇妙な同居に発展。資産家だが不自由な体を持つイフィー(仲野太賀)との交流にもつながっていく。