“大尊時代”はやって来るのか 圧倒的数字が示す大の里&尊富士の強さ 両雄が何度も賜杯を争う未来
大相撲秋場所で大の里が2回目の優勝を飾り、大関昇進を決めた。初土俵から所要9場所は昭和以降最速。そんな新大関のライバル候補の呼び声も高いのが、春場所で110年ぶりの新入幕優勝を果たした尊富士だ。秋場所では2回目の十両優勝。来場所の再入幕が有力となった。スピード出世で歴史的な快挙を達成した2人。足跡を数字でひもとくと、圧倒的な勝率が強さを示していた(通算成績は途中休場による不戦敗を除く)。 【写真】優勝祝賀会の写真を手にほほ笑む大の里 数々の記録を塗り替えている大の里。通算成績は90勝29敗で、勝率は7割5分6厘(・756)を誇る。歴代優勝回数上位の大横綱の中でも8割を超える大鵬(・8344)や白鵬(・8336)、8割近い朝青龍(・798)には差があるが、貴乃花(・757)に肉薄し、北の湖(・735)より高い。 新入幕から所要5場所での大関昇進は、大鵬の同6場所を抜く戦後最速。特筆に値するのは、新十両から大関となるまでの関取としての勝率だ。大の里は7場所(十両2、幕内5)で・762(80勝25敗)。大鵬の10場所(十両4、幕内6)で・733(110勝40敗)を大きく上回っている。新入幕から5場所目までの56勝も、大鵬の53勝より多い。圧倒的な勢いをよく表している数字といえるだろう。 通算勝率でいえば、尊富士はさらに高い数字をたたき出している。初土俵から84勝12敗で・875は、大横綱たちを軒並み上回る。関取になって以降でも・872(41勝6敗)。右足首などのケガで2場所連続の休場もあったが、皆勤した3場所(幕内1、十両2)をすべて13勝2敗で優勝しているのは、やはりずばぬけた成績だ。 2人に共通していえるのは、とにかく攻める相撲。高田川審判部長(元関脇安芸乃島)は、秋場所の大の里を「言うことはない」と絶賛し「どんどん前に出て、相手を倒す相撲はすごく評価された。前に出る気持ちは強いだけに、将来が楽しみ」と話していた。尊富士については、武蔵川親方(元横綱武蔵丸)が「当たって押す。迷っていない。相撲の基本でシンプル。ぶつかり稽古と同じ」と高く評価。「前へ前へ、差しても止まらない」と長所を挙げていた。 24歳の大の里と25歳の尊富士。ファンの間では“大尊時代”の到来を期待する声があがっている。初優勝では尊富士に1場所先を越された大の里は、千秋楽まで賜杯を争った春場所の経験を「あとちょっとだったのに…と、すごく悔しい気持ちになった」とエネルギーに変えて、夏場所の歴代最速Vにつなげた。ケガの間に大の里に差を広げられた尊富士も、再入幕を濃厚とした秋場所の千秋楽で「すごい方。僕は追いかけるつもりで、これから頑張る」と意識を口にしていた。 2人の対戦は、尊富士が押し出しで勝った春場所のみ。11月の九州場所では、幕内に返り咲いた尊富士が後半戦まで白星を重ねていけば、大の里との大関戦が組まれる可能性も出てくる。両雄が何度も賜杯を争う未来も、そう遠くないかもしれない。(デイリースポーツ・藤田昌央)