シーズンオフの阪神巨人戦の行方 掛布氏が分析
楽天の田中将大選手のメジャー挑戦を残して、ストーグリーグの火も、落ち着きつつある。セ・リーグの各球団の補強を見渡すと、水も漏らさぬ磐石な補強を終えたのは巨人だ。「巨人の欲しい、欲しい病がまた始まった」と批判する声もあるらしいが、私は、そうは思わない。チームにとってのウイークポイントに的を絞った戦略的な補強だったと思う。 ■西武から片岡、中日からは井端を補強 寺内、脇谷、中井らが守ったが、どうしても懸念だったセカンドのポジションに西武からFAで片岡、そして中日を自由契約となった井端を揃えた。一見、だぶった補強に思えるが、井端には、卓越した守備の技術にチームバッティングの技術、そして、練習に取り組む姿勢など、坂本ら若手の範となるべきプラスアルファがある。また情報戦という意味で中日の内部を知る井端の存在もあるだろう。そういう井端が、チーム内に与える刺激や化学反応の部分を原監督も期待したのだろう。 ■投手補強は広島・大竹をFAで獲得 また宮国らの若手が伸び悩み、シリーズでは、杉内の不調もあって、内海、菅野、ホールトンに続く先発の4、5番手への不安を露呈した。しかも、ホールトンが退団。その不安な先発陣をテコ入れするため、10勝10敗の数字を残し実績と安定感のある大竹寛をFAで広島から獲得した。さらに韓国でプレーしていた左腕のクリス・セドンとも契約。退団したボウカーに替わる新外国人外野手の獲得にも動いていると伝えられているが、それらもすべて空いた穴を埋めていく補強だ。 野手では、阿部、坂本、長野、投手では、内海、菅野、山口、西村と、生え抜きの選手を軸として持っている巨人は、そういう穴埋めの補強でことが足りる。昔は、金権野球の批判を浴びたが、ここ数年のチーム育成戦略で「金で勝つ野球」からは完全に脱皮している。 ■主軸の補強が必要だった阪神 では、我が阪神はどうだろう。 巨人とは違い阪神の補強ポイントは、水が漏れている箇所の穴埋めではなく、エースと4番とストッパーという中心選手を探さねばならなかった。特に「4番サード」と「ストッパー」が、深刻な補強ポイントだった。4番候補にはドミニカ出身のゴメス、ストッパー候補には、韓国の呉昇桓と契約できたのは良かったが、入れ替わりに先発ローテーションに入っていたスタンリッジが退団、そしてストッパーから先発に回る予定だった久保も横浜へFA移籍した。現状の戦力バランスを考えると、阪神は、守りの野球で勝負しなければならない。そう考えると防御率2点台で、安定したピッチングを見せるスタンリッジの退団は痛い。久保にしてもそうだろう。