浜名湖事故あす14年 カッターボートの海洋活動本年度限り 三ケ日青年の家、子どもの負担軽減理由
浜松市浜名区の県立三ケ日青年の家が、静岡県内の青少年教育施設で唯一のカッターボートの海洋活動を本年度限りで終了することが16日までに、同施設への取材で分かった。ボートの老朽化や児童生徒の体力的な負担軽減が主な理由。2010年に愛知県豊橋市立章南中1年の女子生徒=当時(12)=が亡くなったボート転覆事故から18日で14年。来年度以降は、17年度に導入した双胴船「ダブルハルカヌー」で海洋活動を継続していく。 「ボートの安全性と子どもの体力低下の影響を考えた苦渋の決断」。施設の御園崇所長(48)が決定の経緯を説明した。事故以前から長年使用してきたボートは、浮力体の老朽化が進んでいるという。夏季の猛暑が顕著になり、活動中の体調管理の重要性が増してきた状況も背景にある。 カッターボートは艇長を含めて30人乗りの9メートル艇と20人乗りの7メートル艇の2種類。櫂(かい)が1本約4キロと重く、総重量は1トン以上になる。太陽光の照り返しも強いことから、同施設は近年、活動中の熱中症対策に重点を置いてきた。 一方、12人乗りのダブルハルカヌーはパドルが約500グラムで、総重量はボートの約3分の1。ボートと比べてこぎやすいため、子どもの体力的負担は軽く、安全性が高いとされる。 ただ、活動の難易度が下がるほか、ボートを体験できる施設が県内から姿を消すことになり、連帯感や達成感など教育的な効果の観点で学校側から継続の要望もあったという。 同施設は、転覆事故後に海洋活動を再開して以降、安全対策や緊急時対策のマニュアルの確認、改訂を繰り返してきた。御園所長は「要望を聞き、これまでの安全に向けた取り組みが理解されていると感じた。カヌーでも、子どもたちが満足できるプログラムを模索していきたい」と話す。 女子生徒の父(65)は「娘の命を生かすために研修活動自体は萎縮してほしくないと考えてきた。残念な気持ちはあるが、ボートからカヌーに形が変わっても、海洋での学びの機会は継続されると期待している」と願った。 ■浜名湖のボート転覆事故 2010年6月18日、三ケ日青年の家で海洋活動中の豊橋市立章南中1年生ら20人が乗ったカッターボートが悪天候で航行不能となり、えい航中に転覆。ボートに閉じ込められた女子生徒が死亡した。出航時、大雨、雷、強風、波浪、洪水の注意報が発令されていた。14年度から三ケ日フィールドパートナーズが指定管理者となり、16年度に海洋活動を再開した。
静岡新聞社