首位キープを春の珍事と言わせない!楽天岸が「攻めて」FA移籍後初勝利
FAで西武から楽天へ移籍した岸孝之(32)が9日、ZOZOマリンのロッテ戦で初先発し、6回を投げて鈴木大地に許したソロアーチ1本だけに抑える4安打1失点の内容で今季初勝利をマークした。インフルエンザで開幕に出遅れた岸だったが、好調打線の援護をバックに「攻めのピッチング」に徹した。チームは球団創設以来初となる開幕3カード連続の勝ち越しを決めた。頼れる岸の合流は首位独走のチームにさらなる追い風になる。 強い雨が降っていた。午後3時を過ぎると天気は回復する予報だったが、試合開始直前は、空も分厚い雨雲に覆われ、風も吹き、とてもこれからプレーボールがかかるような状況には思えなかった。 だが、岸は「(雨で中止になって)流れないでくれ」と念じていた。3月31日のオリックス戦の開幕投手に指名されながらインフルエンザで回避した。9日遅れの岸にとっての開幕戦をこれ以上は延ばしたくない。いや、これ以上、チームに迷惑をかけたくはない。「試合で早く投げたかった」が岸の本音だった。 与田投手コーチは「試合はやるつもりで集中力を切らさないでおこう」とミーティングをした。 梨田監督も「(降雨でも)どうぞ、どうぞやってください、という気持ちになれた。それくらいの存在感が岸にはある」という。 岸ワールドだった。 「なんとか当てようと思った」という茂木のプロ初となる先頭打者アーチなどで、2点の援護をもらった後の立ち上がりで、二死一、三塁のピンチを背負った。今のロッテ打線で唯一の注意人物の鈴木大地を迎えたが、スライダーで誘って一塁ゴロに打ち損じさせた。 「先制点を取ってくれて、それを守るために攻めのピッチングができた。振り返れば、あそこをゼロに押さえられたので気持ちが落ち着けた」 雨にもめげず岸は攻めた。 打者24人に対して、ピッチャーズカウントと言われる0-2、1-2のストライク先行カウントを作ったのが7度。逆にボール先行したのは、2度しかなかった。 コースを綺麗に投げ分けて最速146キロのストレートを軸に追い込んでチェンジアップを落とす。チェンジアップを投げる際に、爪で親指の付け根を切ってズボンを血で汚しベンチを心配させたが、「いつものこと」で大事に至らず、雨が降り続き「常にスパイクに土がついた」状態で岸は「集中力を保った」。 「少しボールが上ずってきた」(与田コーチ)という5回に一死一、二塁のピンチを作った。 「打線が低調なので動いた」とロッテの伊東監督は、早い仕掛けで代打にベテランの井口を送ってきた。岸はストレートで押した。勝負球は外角高めのストレート。力ない打球はセンターへ上がった。続く昨季の首位打者、角中にも5球続けてストレート。最後は膝元のボールになるスライダーで誘う。憎いほどの投球術だ。 プロ初の先頭打者アーチだけでなく4回にも貴重な中押し点となる三遊間タイムリーを放った茂木が、こんな表現で岸を称えた。 「攻められた打球ではなく打ち取った打球が飛んできた」 ショートのポジションで2度、打球処理をした茂木は、「コントロールが凄くよくて打者も打ち急いでいる感じがした」という。 確固たる意思をボールに伝えて支配したのである。