じつは、インカ帝国の繁栄は「わずか100年」ほど。その背後にある1万数千年のアンデス文明が遺した「超技術」
あの時代になぜそんな技術が!? ピラミッドやストーンヘンジに兵馬俑、三内丸山遺跡や五重塔に隠された、現代人もびっくりの「驚異のウルトラテクノロジー」はなぜ、どのように可能だったのか? 現代のハイテクを知り尽くす実験物理学者・志村史夫さん(ノースカロライナ州立大学終身教授)による、ブルーバックスを代表するロング&ベストセラー「現代科学で読み解く技術史ミステリー」シリーズの最新刊、『古代日本の超技術〈新装改訂版〉』と『古代世界の超技術〈改訂新版〉』が同時刊行され、続々と増刷しています! 【画像】これがナスカの地上絵か…! 描かれ方がわかると、さらにびっくり それを記念して、両書の「読みどころ」を、再編集してお届けします。今回から数回にわたり、前回までのメソアメリカ文明*に続いて、南米の「アンデス文明」の超技術についてご紹介します。 *好評のメソアメリカ編はこちらから
「世界六大文明」の一角
前回までに述べてきたのはメソアメリカ文明である。旧来の「四大文明」に中南米の二大文明(図「メソアメリカ文明とアンデス文明」)を加えたのが「世界六大文明」であるが、その二大文明の一翼を担うのがアンデス文明である。 アンデス文明と聞いて、一般にすぐ思い浮かぶのはインカ帝国、ナスカの地上絵、「天空都市」マチュ・ピチュだろう。 事実、いま日本人が最も訪れたい「世界遺産」の一つは、アンデス文明の“象徴”ともいえるマチュ・ピチュを含むインカ帝国やインカ文明の遺跡だそうである。私もおよそ20年前に現地を訪れた。
アンデス文明の歴史
後述するようにインカ帝国の前身となるクスコ王国が成立するのは13世紀である。インカ帝国が栄えたのは日本でいえば室町時代にあたり、15世紀からのわずか100年間ほどでしかない。これでは二大文明の一翼を担うのは無理であろう。 現在のペルー、ボリビアの中央アンデス地帯に人類が登場したのはいまから1万年ほど前と考えられており、以来、現在まで、正確には16世紀にスペイン人に破壊されるまでの間に培われてきたのがアンデス文明である。この文明の詳細は、『古代アンデス 神殿から始まる文明』(大貫良夫、加藤泰建、関雄二編、朝日選書、2010)などの参考図書に譲るとして、アンデス古代文化の簡略年表を図「アンデス古代文化の簡略年表」に示す。 アンデス文明においては、地方ごとに独自の文化が栄えた時代と、特定の文化が広範囲にわたって影響を及ぼした時期とが交互に訪れている。後者の時期は「ホライズン(horizon)」とよばれ、紀元前10世紀頃に現れたチャビン文化はアンデス文明の最初のホライズンである。 前述のように、インカ帝国自体は室町時代の頃、わずか100年ほどしか栄えていないが、インカは先行するさまざまな文化のアンデス文明の頂点に位置するホライズンということになる。
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