甲斐拓也が入団決定 FAで失敗を繰り返してきた巨人 阿部監督は大型補強を結果につなげられるのか
■かつてFAで4番やエースをかき集めた巨人 FA制度が導入された1993年オフ以降、巨人は潤沢な資金力で果敢に他球団の4番打者、エースを補強してきた。90年代は、打者では中日の落合博満(93年)、ヤクルトの広澤克実(94年)、西武の清原和博(96年)、広島の江藤智(99年)らを獲得。投手では広島の川口和久(94年)、ダイエー(現ソフトバンク)の工藤公康(99年)らを獲得した。だが、94年から00年の7年間でリーグ優勝は3度。戦力では他球団を圧倒したものの、黄金時代を築けたわけではない。97年には近鉄からトレードで石井浩郎を獲得したが、清原、広澤らと一塁の守備位置が重なり、戦力の底上げにつながっているとは言えなかった。 2000年代に入ってもFA補強を続けたが、成功したと言えるのは、小笠原道大、村田修一、丸佳浩など一握り。先発ローテーション入りが期待されながら、わずか1勝しかあげられなかった野口茂樹や門倉健、井納翔一。セットアッパーとして期待されたが3年間で9ホールドだった森福允彦。主軸を期待されたが5年間で一度も規定打席に達しなかった陽岱鋼……。期待外れの成績に終わり、巨人を去る選手たちのほうが圧倒的に多かった。 「FA補強でチームが機能していなかった時期を見てきたファンからは、巨人が大山に最長6年契約を準備しているとメディアで報じられた時、否定的な意見が少なくありませんでした。活躍しなければ不良債権になるだけでなく、若手の出場機会が減る。昨オフに山崎福也を獲得できませんでしたが、先発ローテでチャンスを与えられた井上温大が8勝を挙げて、頭角を現しました。今オフは石川柊太と縁がありませんでしたが、横川凱、堀田賢慎と先発候補で楽しみな若手がいる。中・長期的に見ればFAで補強できなかったことが、チームにとってプラスに働くかもしれません」(前出のスポーツ紙デスク) ■大型補強で活躍の場を失う選手が 巨人は今年のシーズンで大城卓三、小林誠司、岸田行倫と一線級の捕手を併用して戦い、リーグ優勝を果たした。ポジションが重なる甲斐の獲得によって、活躍の場を失う選手が必ず出てくる。また、このオフに中日との契約が終了した守護神ライデル・マルティネスを獲得。4年総額50億円超という破格の大型契約とも報じられている。しかし、巨人には生え抜きで絶対的守護神に躍進した大勢がいる。阿部慎之助監督は、役割が重なる選手たちをどのように起用していくのか。 FAなどの大型補強は、生えぬき選手が活躍、成長する機会を失わせかねない両刃の剣だ。球団には本当にチームに必要な選手なのかを見極める眼力が求められる。来季の巨人は、大型補強を「結果」で示すことができるだろうか。 (今川秀悟)
今川秀悟