77台限定の現代版モビーディックは1億8100万円で落札! ポルシェ「935/19」で数少ないモータースポーツで実際に使用された個体のカラーリバリーは?
クラブレースで闘ったヒストリーもある個体は、1億8000万円オーバー!
このほどRMサザビーズ「The Tegernsee」オークションに出品されたのは、わずか77台しか製造されなかった21世紀のポルシェ935、935/19のうちの1台である。 当初は「アゲートグレー」メタリックで仕上げられ、電子制御ロッキングディファレンシャル、セラミックコンポジット製ブレーキ、アップグレードされた冷却システム、スポーツクロノパッケージ、デュアルゾーンのオートマチックエアコンなどの豪華なオプションも完備。独バイエルン州の正規代理店「ポルシェ・ツェントルム・ミュンヘン・スッド」を介して最初の、そして今のところ唯一となるオーナーに供給された。 この個体、シャシーナンバー「199110」のヒストリーでなにより注目すべきは、2019年7月にベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催された「ポルシェ・モータースポーツGT2スーパースポーツカー・ウィークエンド」にエントリーされた3台の935/19のうちの1台であること。つまり、競技に使用されたことのある数少ない935/19のうちの1台ということである。 レーシングガレージ「ヘルベルト・モータースポーツ」によってセットアップされ、この時スポンサーとなった「カレラ・トイズ」と「レヴェル」のカラーリバリーに仕立て直されたシャシーナンバー199110はオーナー自らの操縦により、1ヒート30分の2ヒート制レースで総合8位、935クラス2位を獲得した。 この日の対戦相手には、ル・マン24時間レースのウィナーであるエジディオ・ペルフェッティ選手や、オリンピックで何度もメダルを獲得し、「ディスカバリーチャンネル」のモータースポーツ番組にも出演したクリス・ホイ卿などがいた。くわえて、レースナンバー 「96/69」を冠したこのポルシェ935を記念して、カレラ・トイズ社はのちにスケールモデルを限定生産することになった。
走行距離はわずか1709キロ
オークションカタログ作成時の走行距離は1709kmと、まだほとんど走行していないこの935/19には、オリジナルの販売明細書と多数のワークショップ請求書などをまとめたファイルが添付されている。 今回のオークション出品に際して、RMサザビーズは「このクルマは、トップクラスのレースで育ったポルシェを所有するという希少な世界への、エキサイティングで非常に魅力的なエントリー」という武闘派ポルシェ愛好家の心をくすぐりそうな謳い文句とともに、110万ユーロ~150万ユーロというエスティメート(推定落札価格)を設定。また、「コンクール・オブ・エレガンス・ジャーマニー」における展示を実質的なプレビュー(入札前の検分)として、入札は2024年7月27日(現地時間)に締め切られることになっていた。 そして実際にオークションの火ぶたが切られると、この935/19には順当にビッド(入札)が集まったようで、終わってみればエスティメートの想定に収まる113万ユーロ。すなわち日本円に換算すれば、約1億8100万円で競売人のハンマーが鳴らされることになったのである。
武田公実(TAKEDA Hiromi)