米債券市場、インフレ率がFRB物価目標下回るリスク織り込む
(ブルームバーグ): 米金融当局がインフレとの闘いを始めて2年余りがたった今、債券投資家は新たなリスクに向き合っている。消費者物価の上昇ペースが鈍化し過ぎることだ。
8月の消費者物価指数(CPI)統計発表を翌日に控えた10日時点でCPI予想に関する指標の一つは、インフレ率が米金融当局の物価目標を下回るリスクを示している。持続的に低いインフレ率は物価高止まりと同様に経済に悪影響を及ぼすと金融当局は以前から論じてきた。こうした状況では当局者が政策金利を低水準に長期間維持する必要性が生じ、景気下降への対応力が低下するためだ。
SGHマクロ・アドバイザーズの米国担当チーフエコノミスト、ティム・ドイ氏は「インフレ加速が今や完全に終わったと市場参加者は感じており、リスクのバランスが雇用に関する当局の責務に移りつつある中で、インフレ目標下振れの可能性が今ではある」とした上で、「こうしたリスクをかなり深刻に受け止めなければならない」と語った。
インフレ連動米国債(TIPS)と通常の米国債の利回り格差を示すブレークイーブンレート(BEI)は10日、10年物が2.02%に低下し、2021年以来最も低い水準となった。これは、向こう10年間のインフレ率平均が2%の当局目標を下回るとの投資家の見方を示唆する。過去のデータに基づくと、CPIは米金融当局がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数を約40ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上回るためだ。
11日に発表される8月のCPIは前年同月比2.5%上昇が予想されており、7月の2.9%上昇から減速する見通し。22年6月には9.1%上昇を記録していた。
金融緩和ペース
BEI低下の主な要因は、通常の米国債利回りがTIPSより速いペースで下がることだ。TIPSは一般的に、通常の米国債より取引が少ない。
ストラテジストは、TIPSの流動性の低さや原油安などテクニカル要因が働いている点にも留意する一方で、BEIは米金融当局が緩和策着手であまりにも後手に回っているとの懸念を表していると警告する。