加速する円安、今後どうなるのか?
円安が一段と進んでいます。しばらくの間、1ドル102円前後で推移してきましたが、8月下旬から徐々に円安方向へ動き、そのまま上昇し続けています。円安になれば輸出企業の株価が上昇しますので、皆さんの感覚としては円安で良いと感じるかもしれません。もちろん、円安で円建ての輸出額が増えても、輸出「数量」は増えないということはすでに明らかなため、過度の期待はしていないでしょう。また、輸入する財の価格は高くなるため、円安が好ましくない人も多くいます。これらの視点は冷静に議論されるようになっています。
今回の円安は米国の金利上昇予測が主な要因
今回の円安に対する視点としてもう一つ必要なのは2面性です。為替レートは安定化する要素もある一方で、不安定になる可能性もあります。というのは、すでに実質的には大幅な円安にもかかわらず、米国の金利引き上げ観測に反応して生じているため、市場の予測が変化すれば円安を引き戻す可能性があるからです。加えて、日本は財政問題を抱えており、本当に米国の金利が上昇する場合は、さらに円安(及び日本の金利上昇)が進む場合もあり得ます。為替が間接的にでもかかわる仕事をしている場合は、これらの点に注意しておくべきでしょう。 今回の円安の要因は、主に米国の金利上昇予測によるものです。為替レートは日本と外国の金利差に反応します。たとえば米国の金利が高くなれば、資金は日本から米国へと流れ、そのときに円売り・ドル買いが生じて円安となります。また、それだけではなく「将来の金利」がどうなるかという予測にも反応します。9月18日の米国10年国債金利は2.62%ですので、たとえば9月2日の2.42%と比較してそれほど上昇しているわけではありません。けれども米国の金利引き上げ観測に対して、為替レートは動いています。 さて、振り返ると、今年に入り長期金利(米国10年国債金利)は低下してきていました。たとえば、2014年1月6日の金利は2.98%と現在よりも高いものでした。ところが、一方で、アメリカの中短期金利はやや上昇傾向にありました。たとえば1月6日の米2年国債金利は0.4%ですが、9月18日は0.59%です。これまで日米の金融政策の影響が強く、為替はどちらかというと長期金利に連動してきました。そのため、為替レートは円安とはなっていませんでした。 けれども5月くらいから、その連動が弱まっていました。おそらく通常の状況へ戻り始めたと考えられます(すなわち経済状況、短期金利との連動が強まる)。ただ、ウクライナ情勢などの影響により円高圧力があったため、円安になるのが遅れたのだと考えています。9月5日のウクライナの停戦合意、そして、米国FRBの金利引き上げ観測等により状況が変化したため、最近の円安進行となっています。急激に円安が進んだのは、本来は6月頃から始まるはずだったものが抑えられていたという側面もあります。その分、大きな調整になったと思われます。 とすると、もし今後も米国の短期金利の上昇あるいは景気回復が緩やかなものに止まれば、為替レートも緩やかな円安傾向で安定的になると考えられます。けれども、冒頭で述べたように2面性があることに注意が必要です。