亀田興毅氏が1000万円マッチで配信サーバーをダウンさせた理由とは?
試合前は、一触即発の舌戦を展開していたが、試合後は「やっぱチャンピオンだな。ストリートと世界の差はでかい。世界は違う」と、亀田氏にリスペクトの念を示して握手を交わした。 最後まで真剣に戦った亀田氏は「4連戦は、引退している身には厳しい。足がやばかった。2試合目くらいから足にきていて、ちゃんと踏み込んだパンチが打てなくなっていた」と1年半のブランクを嘆いた。 解説を務めた竹原氏に試合後に話をふると「やっぱり元世界王者なんだから第4試合も倒さないかんでしょう。でも引退してしまった以上、闘拳は牙を抜かれた闘拳だからね」と、うまい表現をしていた。 数か月の突貫工事で全盛期の動きを取り戻せるほどボクシングという競技は甘くはない。しかもヘッドギアに大きいグローブと体重差のハンディ。本来亀田氏は一撃必殺のパンチャーではなくボクサーだ。逆説的な意味もこめてボクシングの本当の厳しさを亀田氏は1000万を死守した4試合で教えてくれたのかもしれない。 亀田氏は弟の大毅氏の「負けても王座防衛」に絡む一連の問題で2014年2月からJBCのライセンスが失効して、日本で試合ができない状態が続き、2015年10月16日に米国のシカゴでWBA世界Sフライ級王者の河野公平(ワタナベ)に挑戦したが、判定で敗れて引退を表明した。弟で元WBO世界バンタム級王者の和毅が協栄の所属となったため、今年1月にJBCからトレーナーライセンスを交付され日本ボクシング界復帰を果たしていたが、「どんな形であれ、最後に日本のリングに上がりたかった」という思いと「普通とは違うことをやらないと変えることって難しい。みんながよりボクシングの素晴らしさをわかってくれれば」と、今回の賛否と、リスクのある企画を受ける決断に至ったという。 イベントとしては会場の雰囲気は最高で真剣味も痛快さも味わえた。配信サーバーがダウンするほどアクセス数が集中した理由もわからないでもない。 だが、安全管理面に関しては、元世界王者vs素人なのだから、いくら相手がオーディションで選抜したメンバーと言えども、ヘッドギアと14オンスのグローブ使用だけでは不安が残った。この試合に限っては、レフェリーの戎岡が事故を防止するような絶妙のレフェリングを心がけていたし、亀田氏にも素人に対する多少の配慮はあった。だが、KO決着にこだわるルールは、あまりに危険だった。こういう試合形式での“エンタメボクシング”は、ボクシング界からは、決して歓迎されるものではないだろう。 コーナーの下にはプラスチックのケースに囲まれた賞金の1000万円が置いてあった。 この試合だけで3万人の登録が増えたという人気ユーチューバーは言った。 「負けて悔しかったけれど、ボクシングがやれて、めっちゃ楽しかった」と言った。 元総長は言った。 「亀田選手とやったことは1000万円よりもでかい価値ある試合だった」 彼らの言葉は、ほんの少しボクシングが持つ魅力を物語っていたような気がしないでもない。