【矯正歯科医が解説】見た目・スピード・快適さ… 自分のニーズに合った矯正装置(治療法)の選び方
「面倒くさがり」「口が敏感」「痛みに弱い」 性格や感覚にマッチした矯正装置・治療法を見つけるヒント
編集部: 矯正装置や治療法を選ぶ際、「見た目」や「治療期間」のほかに考慮したいポイントはありますか? 小田垣先生: マウスピース型矯正装置は見た目や滑舌を気にされる方に最適な一方で、性格的に「まめでない人」「面倒くさがりの人」にはあまりおすすめできません。 矯正治療は平均して2~3年はかかる治療なので、自分の性格や感覚なども装置や治療法を選ぶ際には重要なポイントといえます。 編集部: なぜ、まめでない人・面倒くさがりの人にマウスピース型矯正装置は向かないのでしょうか? 小田垣先生: マウスピース型矯正装置は1日20~22時間の装着が必要なうえ、飲食の際は必ず装置を外さなければなりません。お水以外の飲み物は外して飲まなければなりませんし、むし歯予防の点から装置をつけ直す前には歯を磨く必要があります。 そのため、「何か口にするたびに外して歯を磨くのは面倒」と思う方には向かない装置といえます。 編集部: 確かに、取り外しが面倒に感じる方は固定式のマルチブラケット装置(ワイヤー矯正)のほうが楽かもしれませんね。 小田垣先生: マルチブラケット装置のほうが「つけっぱなしで楽だ」と感じる方もいらっしゃるようです。一方で、この装置は口内に常に異物が入っている状態になるため、お口の感覚が敏感な方には不快に感じられるかもしれません。 また、マウスピース型矯正装置と比べると痛みも強いため、痛みに弱い方にはマウスピース型矯正装置の方が適していると言えるでしょう。 編集部: 矯正装置や治療法を選ぶ時は、自分の性格や違和感・痛みの感じ方なども考慮したほうがいいわけですね。 小田垣先生: そうですね。数カ月程度のことであれば我慢もできますが、矯正治療は数年単位で行うものなので、長期的な視点で自分に合ったものを選ぶことも重要だと思います。
趣味やスポーツ、転勤の予定…ライフスタイルに合わせた矯正装置・治療法の選び方
編集部: そのほかに、矯正装置や治療法を選ぶ際に考えておきたいポイントはありますか? 小田垣先生: 吹奏楽を趣味にしている方がマルチブラケット装置(ワイヤー矯正)を選択する際は「音色が少し変わるかもしれない」ということはお伝えしています。同じく、スポーツを楽しまれる方もマルチブラケット装置はケガをしやすいため注意が必要です。 競技によってはマウスガードの装着が義務づけられているスポーツもあるため、取り外しができるマウスピース型矯正装置のほうが適している場合もあります。 編集部: 自身の趣味やライフスタイルも、装置や治療法を選択する際に大きなポイントになりそうですね。 小田垣先生: はい。その意味においては、通院ペースや頻度も装置を選択する際のポイントの1つといえます。マルチブラケット装置は基本的に1カ月に1回の通院ペースであるのに対し、マウスピース型矯正装置は2~3カ月に1回と通院の間隔が少し長くなります。 例えば、将来的に転勤の可能性がある場合、少し遠方に引っ越す程度であればマウスピース型矯正装置のほうが転院せずに治療が続けやすいでしょう。 編集部: 最後に、読者へメッセージをお願いします。 小田垣先生: 矯正装置や治療法を選ぶ際は、以上の点を考える前に「自分がどうなりたいか」を明確にすることが何より大切です。まずは、歯並びや噛み合わせ、口元などをどのように改善したいのか、自身がどうなりたいのかを明確にし、それを具体的に歯科医へ伝えましょう。 治療を成功させるうえで一番重要なのは、患者さんと歯科医が同じ目標・同じゴールに向かって進むことであり、装置や治療法はその目標を達成する手段に過ぎません。 その点をふまえたうえで、歯科医とよく相談しながら、自分に最適な装置や治療法を選んでいただきたいと思います。