【曹操・劉備・孫権の人心掌握術】曹操に見習う「若手を惹きつける力」
約1800年前、約100年にわたる三国の戦いを記録した歴史書「三国志」。そこに登場する曹操、劉備、孫権らリーダー、諸葛孔明ら智謀の軍師や勇将たちの行動は、現代を生きる私たちにもさまざまなヒントをもたらしてくれます。ビジネスはもちろん、人間関係やアフターコロナを生き抜く力を、最高の人間学「三国志」から学んでみませんか? ■ 人を惹きつける力は、リーダーには必要不可欠な能力 リーダーに、人を惹きつける力は必要でしょうか。日本でも最近、離職や転職の話題が尽きません。若い人がすぐに会社を辞めてしまうと嘆く声が、企業の管理職から特に増えています。このような離職の問題をどう受け止めればよいのでしょうか。 1つには、日本社会に古くからあった「1つの会社で勤め上げることが美学」という生活文化が、消滅している現実があります。企業やリーダーは、「古い日本的価値観」によって入社した人が離職を考えない、という(かつては存在した)追い風を失っていることになります。この認識がさらに広がるにつれて、離職対策は今後より真剣な話題となるはずです。 しかし、誰もがドライに雇用条件だけを見ているわけではありません。そこには、「このリーダーについていきたい!」という、人間の内面から出てくる欲求もあるのです。 その点で、三国志の英雄たちの人心掌握術には、学ぶべき点がたくさんあります。なぜなら、後漢帝国が崩壊の危機に瀕したあの時代には「この船に乗っていれば安泰」という勢力がほとんどなかったからです。悪政と暴政を極めた後漢の中央政府から、有能な人々が我先に逃げだしたほどだったのですから。 ■ 雇用される側は、リーダーと組織の何を見ているのか? 曹操の初期の軍事的な勝利を支えた程昱(ていいく)は、曹操に仕えるまえに、漢の皇室の血縁者である劉岱(りゅうたい)という人物から士官をさそわれています。程昱は劉岱の依頼を何度も断わりました。一方で、曹操が誘ったときはすぐに程昱は応え、曹操の部下となっています。 程昱と同郷の人が「なぜ劉岱の誘いを何度も断りながら、曹操には簡単に仕えたのか?」と質問したとき、程昱は笑って答えなかったという逸話があります。程昱のような優れた人物から見れば、2つの陣営の魅力の差は明らかだったのです。 英雄たちの傘下に入る者たちは、各陣営の以下の要素を吟味していました。 【リーダーと陣営の魅力の評価指標】 ●リーダーが有能で、掲げる目標に共感できるか ●リーダーと組織が「変化に対処」できているか ●変化をチャンスにできる集団か ●自分の居場所を見つけられるか ●トップ以外に、自分の上司も有能か ●人材評価と人材配置に公平性があるか 忘れてはいけないのは、後漢末期は究極の乱世だったことです。古い権威であった中央政府が混乱を極め、地方を含めて大小の軍閥、反乱軍が台頭したころ。どの勢力に参加するか、どのリーダーの下につくかは、文字通り生死を決める問題でした。だからこそ、仕官先を探すときに、社会が直面しつつある変化に対処できているリーダーと組織を選んだのです。 これは現代の企業組織と、入社を検討する人材側でも同じではないでしょうか。絶対に沈まない船というような企業が見当たらない現代で、新しい変化はつぎつぎと来襲します。変化を先取りする意欲がある企業、変化に対処できている企業に人々が参加したいと思うのはごく自然なことではないでしょうか。