JR西日本の株式1億円分を岡山県真庭市が取得へ、鉄道の存廃議論に発言力高める 市長「鉄道を必要としている市民への配慮は絶対に必要」
人口約4万人の岡山県真庭市が、JR西日本の株式を1億円分購入することを決めた。市内にはJR姫新線が走る。利用者が低迷するローカル路線を存続させるかどうかの議論が広がる中、株主になって発言力を高める狙いだ。路線を維持したい自治体と効率的な経営を重視する鉄道会社の新たな関係に注目が集まる。(共同通信=石井祐) 【写真】赤字ローカル線の存廃議論で欧州から学ぶべきこと「鉄道インフラは民間ビジネスという考えに違和感」
▽通学、通勤に欠かせない 雨が降るある日の夕刻、真庭市中心部の久世駅では、1両編成の列車から高校生らがホームに降りていた。隣接する津山市に通っているという高校3年の男子生徒(18)は「中学生の時から乗っている。列車がなかったら、車で送迎する家族の負担が増える。学生にとって必要な路線です」と話した。 別の男子生徒(18)は普段は自宅から約15キロの道のりを自転車で往復しているが、「雨や雪の日に鉄道は欠かせない」と言う。卒業後、通勤でも姫新線を利用する予定で「廃線になったら絶対に困る」と語った。 赤字が続く地方鉄道の再編に向け、鉄道事業者や自治体からの要請により「再構築協議会」が設置されるようになった。協議対象の目安は1キロ当たりの1日平均乗客数が千人未満の区間とされ、国、自治体、事業者などで鉄道の存廃を含め議論する。 姫新線は兵庫県姫路市と岡山県新見市を結ぶ。岡山県内の姫新線の区間は、2022年度の1日平均乗客数が132~640人。将来、存廃を含めた議論が始まることを懸念する真庭市は今年2月、JR西日本株取得のための資金1億円を2024年度当初予算案に計上し、議案は可決された。
▽配当200万円で鉄道の利用促進 JR西日本の決算短信などによると、2024年4月で発行済み株式は約4億8千万株、時価総額は約1兆5千億円。24年3月期の1株当たりの配当金は142円で配当総額は346億円だ。効率的な経営を求める傾向が強い外国法人などの株式保有比率は、3月末時点で33・78%に上り、外国法人などへの配当は100億円規模とみられる。 真庭市の取得額は時価総額に比べるとわずかだが、太田昇市長は「株主として資本参加することで、無責任に『残せ』と言うのではなく、地域の交通に一定の責任を持ちつつ、JRに必要な意見を伝え、維持を訴える」と話す。「実際に行くかはまだ決めていないが、株主総会で意見を届けることも可能だ」と発言力向上を狙う。 市への配当金は200万円程度を見込み、市民の鉄道利用促進策に充てる。株主優待で得た割引切符は市民に抽選での配布も検討する。株価下落の懸念には「JR西日本は不動産を多く保有し、経営は安定している」と話す。