契約社員ですが「正社員でないから」と通勤手当が出ません。職場まで「往復1000円」かかるのに、そのような契約条件なら仕方ないのでしょうか?
正社員なら通勤手当が出るのに契約社員には出ない、というのは、本当に適切なのでしょうか。「その条件で労働契約を結んだ以上、文句を言うのはおかしい」と考える人は多いようですが、いま1度よく考えてみましょう。 働き方改革の「同一労働同一賃金」は正規非正規の不合理な待遇差を是正することを国の政策として進めています。不合理な待遇差があれば、国から是正を求められることもあり、また民法上の損害賠償の対象にもなりうる問題です。通勤手当を例として、社員の皆さんが不合理な待遇差だと思う場合の対応の仕方を説明します。
正規・非正規の定義
まず、正規社員(正社員)と非正規社員の定義を確認しましょう。 正社員は、「フルタイム」「無期雇用」「直接雇用」の3要件を満たす人です。非正規社員はこの1つでも満たさない人です。「フルタイム」でないのが、パートタイム労働者などです。「無期雇用」でないのが「有期雇用労働者」です。「契約社員」、「嘱託」、「準社員」、「アルバイト」などさまざまな呼び方があります。「直接雇用」でないのが「派遣社員」です。
正規非正規には著しい賃金格差、一方で正社員は長時間労働などの問題がある
非正規雇用労働者(非正規社員)は、図表1のように2010年以降増加傾向にあり、雇用者全体の4割近くになっています。そして、図表2のように、時給ベースでも正規社員より相当に賃金が低いのが現状です。 しかし、正社員には長時間労働、転勤が当たり前、などの問題もあります。長時間労働は、女性のキャリア形成や男性の家庭参加を阻む原因にもなっています。 図表1
厚生労働省 「非正規雇用」の現状と課題 図表2
厚生労働省 「非正規雇用」の現状と課題
「働き方改革」の「同一労働同一賃金」で不合理な待遇差の是正が求められている
「働き方改革実行計画」(実行計画)の「同一労働同一賃金」は2021年4月に全面施行され、正規と非正規の労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指しています。不合理な待遇差を解消することは、低賃金の解消のみならず、労働生産性向上、多様な働き方の自由な選択、さらに出生率向上にもつながるからです。 そして、不合理な待遇差は非正規社員の意欲を阻害します。不合理な差を埋めれば、働く意欲を高め労働生産性が向上するでしょう。 特に女性は結婚、子育てなどの理由から、30代半ば以降非正規を選択する人が多くいます。正規非正規の待遇差から生涯賃金に大きな差が出る一因になります。 非正規社員の待遇を改善し、女性や若者などの多様な働き方の選択を広げれば、希少となる人材を社会全体で育て、一人ひとりに自己実現の道を切り開くことができます。実行計画では「非正規」という言葉を一掃する、とまで述べられています。