2024年のK-POPを総決算 1年を振り返って実感するアーティストたちの「自信と貫禄」
バンドサウンドが人気に
バンドサウンドも2024年のK-POPシーンを語る上で外せないほど、たくさんの人に愛された。メンバー全員が兵役を終えて、再び本格的に活動を開始したDAY6は、常にヒットチャートの上位にいるほどの人気ぶり。彼らの場合は、一部のメンバーが軍隊にいる時期に行った公演が評判を呼び、復帰後の大ブレイクにつながったわけだが、それを差し引いても、これだけ売れたのは、ひとえにサウンドの良さと言えるだろう。 この方面でもう1組押さえておきたいのが、前回のコラムでも紹介した女性4人組のQWER。日本の4コマ漫画『ぼっち・ざ・ろっく!』やアニメ『推しの子』にインスパイアされて始めた企画から登場したバンドで、デビューから程なくしてスターダムへ。「悩み中毒」「私の名前は晴れ」といった、日本のアイドルが歌うような明るく元気なナンバーをバンド演奏する様子が、韓国の若いリスナーを中心に歓迎されたのは想像に難くない。 <J-POPなど日本の音楽の影響も> 日本のカルチャーが隣国に刺激を与えているケースは、実は他にもある。それは昭和・平成の歌謡曲で、「ギンギラギンにさりげなく」(近藤真彦)や「道化師のソネット」(さだまさし)、「雪の華」(中島美嘉)など、日本の人たちにとっては懐かしいヒットソングが現地で大きな注目を集めているのだ。 こうした曲の魅力を広めているのが、日本では無名に近い女性シンガーたちだったのが興味深い。彼女たちは日本のオーディション番組『トロット・ガールズ・ジャパン』の出身で、春にトロット(日本の演歌に相当するジャンル)系の歌手たちと対決する韓国のバラエティ番組『日韓歌王戦』に出演。そこで披露された日本の曲が老若男女問わず受けているのだ。おそらく「美しい曲を上手に歌う素晴らしさにあらためて気づく」という原点回帰なのだろう。これはダンスポップ至上主義だったK-POPシーンの劇的な変化であり、同時に新たな日韓交流の幕開けとなる出来事だけに、来年も引き続き動向を追っていきたい。 <グローバル化で手にしたものは?> 一方で、韓国の宴席でよくやるゲームを題材にした「APT.」(ROSÉ & Bruno Mars)が米ビルボードのメインチャートでトップ10入りを果たし、大韓ヒップホップの魅力をこれでもかと詰め込んだG-DRAGONの「POWER」が国内の若者の間で評判になるなど、"韓国らしさ"を濃厚に感じさせるナンバーが次々とヒットする----。そのような2024年のK-POPシーンを俯瞰して思うのは、世界的な人気ジャンルになったことで手に入れた、韓国人アーティストたちの"自信と貫禄"である。他国の良いところを吸収しつつも、自身の美学も大切にする姿勢。これを維持し続けるK-POPは、今後も巨大化の一途をたどるに違いない。