甲斐さやかの監督作「徒花」東京国際映画祭へ、井浦新&水原希子が作品への思い語る
甲斐さやかが監督を務めた「徒花-ADABANA-」が、第37回東京国際映画祭のウィメンズ・エンパワーメント部門に出品決定。あわせて甲斐、キャストの井浦新、水原希子より本作へのコメントが到着した。 【画像】水原希子が出演した「徒花-ADABANA-」場面写真 「徒花-ADABANA-」の舞台は、ウイルスの蔓延で人口が激減し、延命措置として上層階級の人間だけに自分と同じ見た目の“それ”の保有が許された世界。死が身近に迫る新次は、自分と同じ姿だが異なる内面を持つ“それ”に心を乱されていく。井浦が新次を演じ、水原が臨床心理士のまほろに扮した。 1996年に世界初の哺乳類のクローンである“羊のドリー”がスコットランドで作られたことに触れる甲斐は「その記事を読んで調べていたら『クローン桜』のことを知りました。実は、日本で見ている桜のほとんどが一代限りのクローン桜なんです」と思い返す。「私達が日本の原風景だと信じているものがクローンだということに気付いてしまったことで、今の私達がコンピューターや技術を操っているように思っていても、実はこっちが操られているんじゃないかと思った」と本作の構想を振り返った。 甲斐の作品には「どんな小さい役でもいいから出演させてほしい」という井浦は、新次について「高いハードルに対する不安と、でも絶対に演じてみたいというワクワクが混じって、楽しみで仕方がないという意味で“身震い”しました」と回想。甲斐組に初参加となる水原は、彼女が監督し井浦が出演した「赤い雪 Red Snow」を観たと明かし「人間の怖い部分が描かれているのが魅力でした。でもそこに、美しさも感じました。そういう、言葉にはできないものが映画の中にはあって、怖いけれど美しくて芸術的な作品だなと思いました」と語った。 10月28日から開催される東京国際映画祭に新設されたウィメンズ・エンパワーメント部門は、女性監督の作品、あるいは女性の活躍をテーマとする作品にフォーカスを当てるもの。同部門のシニア・プログラマーであるアンドリヤナ・ツヴェトコビッチからのコメントを以下に掲載している。 「徒花-ADABANA-」は、10月18日より東京・テアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国で順次公開。三浦透子、斉藤由貴、永瀬正敏、甲田益也子、板谷由夏、原日出子もキャストに名を連ねた。 ■ アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ コメント 「ウィメンズ・エンパワーメント部門」の一作に映画「徒花-ADABANA-」を選んだのは、甲斐監督が示唆に富む近未来の世界を説得力を持って創り出しているからだ。森を瞑想の場として使い、「羅生門」の自然描写を思い起こさせる。そして、この映画のアイデンティティ、人生、人間性に対する探求は格別であり、現代の社会問題と共鳴する複雑な哲学的ジレンマを扱っている。更には、説得力のある演技、的確なストーリーテリング、力強い語り口によって、この映画は観客を魅了すると同時に、存在と道徳に対する理解を再考するよう挑戦している。監督の先見性の強さが、この作品を傑出した一作にしている。 (c)2024「徒花-ADABANA-」製作委員会 / DISSIDENZ