トランプ氏は刑務所の中で大統領当選?有罪評決は出たが、その後どうなる…「もしトラ」を司法制度からやさしく解説
■ トランプ裁判で学ぶ日米司法制度の違い 今回の「やさしく解説」には、「大陪審」「陪審員」「訴追」「評決」など日本の裁判ではあまり聞かれない言葉が登場しています。日本と米国の司法制度が大きく異なっているためで、トランプ氏の裁判をつぶさに見ていくと、日米の違いがよく表れています。 米国の刑事裁判は連邦も州も陪審制です。事実認定を担うのは一般市民から無作為に選ばれた陪審員です。陪審員は提出された証拠物を吟味し、検察側と弁護側の応酬に耳を傾け、事実認定を行ったうえで被告人の有罪・無罪を判断します。これが「評決」です。被告人を有罪とする評決が出ると、裁判官は量刑を決め、「判決」を言い渡します。 陪審制は司法への市民参加のひとつの形です。独裁者に操られた裁判所が恣意的な判決を言い渡すようなことのないよう、地域住民の常識的な判断で市民の自由を守ろうとする制度です。日本の裁判員制度も司法への市民参加が狙いですが、事実認定と量刑を裁判員と裁判官が一緒に行うところが米国と違う点です。 起訴の手続きも日本とは大きく異なります。連邦裁判所では、検察が重大事件を刑事裁判にかけようとする際には、裁判所に設置される「大陪審」に証拠などを提出する「訴追」を行います。 その事件を起訴するかしないかを決めるのは、市民で構成された大陪審なのです。連邦裁判所だけでなく、ニューヨークを含む約半数の州でも裁判所は大陪審制度を導入しています。起訴も評決も市民が決める。それが米国の司法制度の基本です。
■ 判決は共和党の大統領候補指名の直前 ニューヨーク州におけるトランプ氏の裁判は現在、陪審員12人の全会一致で「有罪」の評決を出し終え、裁判官による判決を待っている状態です。 判決は7月11日の予定です。ニューヨーク州法の規定では、トランプ氏は懲役4年以下の刑となりますが、収監に至らない可能性もあります。また、判決の日は共和党が大統領候補を指名する全国大会の直前。そのため、秋の大統領選にどのような影響があるのか、関心が高まっているのです。 ただ、仮に実刑判決が出たとしても、トランプ氏の立候補は可能と見られています。合衆国憲法は大統領の要件として「米国生まれで、35歳以上で、米国に14年以上居住していること」としか規定していないからです。実際、1920年の大統領選では刑務所から選挙活動をした例があります。 有罪の評決が出た後、トランプ氏は「腐敗して倒錯した裁判官による不正な裁判だ」と非難し、控訴の意向を表明しました。熱烈なトランプ支持者は評決が不当だとして逆に結束を強めています。トランプ氏も「本当の評決は(大統領選投票日の)11月5日に出るのだ」と訴え、支持を呼びかけています。 一方、バイデン大統領は米国の司法制度の伝統や法の支配を強調しつつ、「結果が気に入らないからといって、裁判が不正だと主張するのは無責任だ」とトランプ氏を批判しています。バイデン陣営は大統領選の相手に変更はないと考え、「トランプ氏を就任させない方法はただ一つ、投票で決着させることだ」と、こちらも秋の決戦に照準を定めています。 トランプ氏はニューヨーク州の不倫事件のほかにも3つの刑事裁判で被告になっています。