「現役時代よりその後のほうが長いのに…」女子選手の「生理」について元五輪代表・杉原愛子が思うこと
生理やPMSについてもっとフランクに話せる環境に変わってほしい
――自分に合う対策方法がわかっていると、不安も軽減されますね。日常的にハードな運動をしているアスリートの方は、エネルギー不足から無月経に陥りやすいと聞きました。 そうですね。特に体操選手は、レオタードを着るので必要以上に体重を気にしたり、中には指導者でさえ生理が来ない方がいいと思いがちですが、本当は、毎月あるはずの生理が「ない」状況って、体に何らかの異常があるサインなんですよね。 きっと、体操選手として生きる人生よりも、その先の人生の方が長いし、いずれ子どもを産むかもしれない。自分の身体を理解して、毎月やってくる生理と向き合うことは本当に大切だと思います。 ――選手同士やコーチと、生理やPMSについて話すことはありますか? 特に、スポーツの指導者は男性が多いかと思うのですが……。 (武庫川女子)大学時代から、フランクに話し合えるようになりました。生理中は練習着の上から腹巻もしてますし(笑)。 私は特に、コーチにこそ自分のコンディションを隠さずに伝える必要があると思います。 日本人の女性の中には、生理について人前で話すことは「恥ずかしい」とか、男性には「伝えてもどうせわからない」と思っている方も多いですよね。私自身も以前、生理中であることを伝えられなくて、無理をしてケガをしてしまったことがありました。 現在のコーチは男性ですが、「自分にはその痛みや辛さがわからないからこそ、少しでも負担が少ないように」と、無理がないプログラムを一緒に考えてくれます。 また、女性同士だったらわかり合えるのでは、とも思われるかもしれませんが、かつて体操選手だった方の場合は「自分が現役時代もそれで大丈夫だったから」と流されてしまうことも。性別に関係なく、コーチが選手の状態を把握して、向き合うこともとても大切なことだと思います。 ――2016年のリオ五輪では、中国の競泳女子選手が「昨日、生理になって……」とコメントしたことが注目されました。これまでなんとなくタブーとされてきた「生理×スポーツ」が話題になる機会も増えましたが、どう感じていますか? 確かに以前よりは、私自身も含めて女性アスリートが積極的に発信したり、メディアで取り上げられることも増えたとは思いますが……海外と比べるとまだまだ関心度は低いですよね。 文化の違いなどはあるかもしれませんが、生理やPMSについて、男女関係なくもっとフランクに話せる環境に変わっていってほしいですね。 杉原愛子(すぎはら・あいこ) 1999年大阪府出身。2015年、日本代表として第6回アジア体操競技選手権大会に出場し、日本女子団体総合で金メダル、個人総合でも金メダルを獲得。 2016年リオデジャネイロ、2021年東京、2大会連続オリンピック出場。2017年10月、モントリオールで開催された世界体操競技選手権大会では個人総合決勝の平均台で披露した「足持ち2回ターン」が、新技「SUGIHARA」と命名された。 2022年に選手として「一区切り」し、第一線から退くことを発表。翌年、全日本体操種目別選手権で1年ぶりに競技復帰し、床で2年ぶりの優勝を果たした。2023年に株式会社TRyASを立ち上げ、体操競技の普及活動や後進の育成にも力を注いでいる。 TRyAS Instagram @aiko_sugihara
河西みのり