北斎、広重、国芳らの浮世絵から江戸時代の食文化を紐解く『江戸メシ』太田記念美術館で
渋谷区神宮前に位置する浮世絵専門の美術館、太田記念美術館では、2025年1月5日 (日)より、展覧会『江戸メシ』を開催する。北斎や広重、国芳らによる江戸の庶民の暮らしを描いた約90点の浮世絵を通して、現代の食文化につながる「江戸メシ」の魅力を紹介する展覧会だ。 【全ての画像】四代歌川国政《志ん板猫のそばや》ほか広報用画像(全11枚) 江戸時代は日本において食文化が大きく発展した時代である。寿司や蕎麦、天ぷらなどのルーツは江戸時代にあり、庶民たちが手軽に楽しむことのできるファストフードとして人気を博した。味噌や酢、醤油といった調味料も広く流通するようになり、人々は、自宅で料理をすることはもちろん、近所の店で惣菜を買ったり、気軽な屋台や、立派な店構えの料亭で外食を楽しんだ。そんな江戸っ子たちの食生活を描いたのが、北斎、広重、国芳などをはじめとする浮世絵師たち。 今よりもずっと大きな寿司を食する国芳の健康的な町娘に、月夜に天ぷらを楽しむ芳年の遊女、ざくざくと角切りにしたスイカの山盛りを前に涼をとる国貞による浴衣姿の女性たち。さらに広重が描く、江戸の老舗料亭・八百善や二十六夜待の日に高輪にズラリと並ぶ屋台。さらには、旬の鰹を軒先でさばく鰹売りや、大森の沿岸に小舟を浮かべて海苔を採取する人々など、江戸っ子たちの「食」に関する様々な場面を見ることができる。四代歌川国政による《志ん板猫のそばや》などは、店員も客も猫ながら、蕎麦打ちから、厨房、店内の風景、果ては蕎麦の店頭販売や出前まで、当時の蕎麦屋の様子を逐一知ることができるのが面白い。 今や世界的に知られる日本の食文化だが、日本人の「食」への飽くなき探求心は、多彩な食材をもたらす豊かな自然と同時に、250年の天下太平が育んだ文化的爛熟の賜ということができるだろう。 会期中は、3回にわたって学芸員によるスライドトークが行われる予定。詳細は美術館ホームページで確認を。 <開催概要> 『江戸メシ』 会期:2025年1月5日(日)~1月26日(日) 会場:太田記念美術館