〈増える育児うつ〉「トイレに行ってる間に何かあったら…」睡眠4時間、常に双子育児の重圧と復職への不安を抱えた育休中の父親が「うつ病」に
パパコミュニティ形成が鍵? 育休を強く推奨するワケとは
平松さんのうつ病が寛解したきっかけもまた“育児”の変化だった。双子の慣らし保育が始まったのだ。そうして自分1人の時間が持てたり、妻と2人で出かけたりできるようになったことで、「自分だけで見ていなくてもいいんだ」という安心感が芽生えた。 さらに翌月、会社に復職したが、自身の得意な映像制作のポジションをすぐに確立できたことで不安が一気に和らいだという。 2020年11月、平松さんは映像制作のフリーランスとして独立。妻もネイルサロンを開業し、現在は夫婦ともに自宅を作業場にして育児と両立させる日々を送っている。 育児うつの経験から平松さんが学んだこととはなんだったのか。 「『頑張りすぎない』ことですね。独立してからは、無理な仕事は受けない。子どもが帰ってきたら割り切って子どもとの時間を過ごす。本当に“無理をしない”ことですね」 さらに母親と違い、父親同士のコミュニティが形成しづらいことも今後の課題の1つだと振り返る。 「パパのコミュニティがあるかないかって結構大きいなと思っていて…。ママ同士は公園や児童館でコミュニティが形成されやすいけど、パパってなかなか難しい。今はオンラインコミュニティとか徐々に増えてますけど、自分の育休中はほとんどなかった。 もし元気なときからそういうのに参加していたら、育児で辛くなったとき、顔を出していろいろな思いを共有できて楽になれたのかもしれません。そう思うと、同じ境遇や状況の人と繋がっていることって、すごく大事だなって感じます」 今年、家族は拠点を再び東京に移し、双子は都内の小学校に入学した。 「小学校に入学して徐々に友達と過ごす時間が増えていって、だんだんと自分たちから離れていくカウントダウンが始まったのかなって感じてます。だからこそ『一緒に遊びたい』って言ってくれるときは極力一緒に過ごしますし、『一緒に寝たい』って言われたら二段ベッドを行き来して添い寝しますよ(笑)」 平松さんは2021年7月から男性の育児参加を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」に所属し、自身の育児うつの経験を広く知ってもらおうと講演を行うほか、東京都板橋区のパパの育児参加を推進する男女平等参画の委員も務めている。 「僕にはジェンダーギャップを早く解消したいって思いがあるんです。男らしさとか女らしさから解放されて、みんなが自分の人生を主体的に生きてほしい。僕は育休を1年取ったことで働き方や生き方の価値観が大きく変わったし、『自分が大切にしたいものってなんだろう』って見つめ直すきっかけになった。もちろん自分自身が育休を取得して楽しかったこともありますが、ジェンダーギャップ解消などいろんな意味を込めて、改めて男性の育休を推奨していきたいです」 取材・文/木下未希
集英社オンライン編集部
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