写真家・石川真生のドキュメンタリー映画『オキナワより愛を込めて』が公開
半世紀にわたって沖縄を撮り続けてきた、1953年沖縄県大宜味村生まれの写真家・石川真生。2021年には沖縄県立博物館・美術館、2023年には東京オペラシティ アートギャラリーで大規模な個展が行われ、今年度は芸術選奨文部科学大臣賞、土門拳賞、写真の町東川賞 国内作家賞と、受賞が続いている。 【全ての画像】写真家・石川真生のドキュメンタリー映画『オキナワより愛を込めて』 そんな石川が初期作品をもとに当時を振り返る自伝的ドキュメンタリー映画『オキナワより愛を込めて』が公開される。すでに8月24日(土)より沖縄で先行上映、東京ではシアター・イメージフォーラムで8月31日(土)より上映が始まる。監督は1972年に広島県で生まれ、1990年に渡米し、ニューヨークを拠点に活動する砂入博史。チベットや福島、広島の原爆などをテーマとしたドキュメンタリーを手がけ、2018年には袴田巌をインタビューした『48 years –沈黙の独裁者』で熱海国際映画祭長編コンペ特別賞を受賞している。 石川が写真の道に進むきっかけとなったのは、1971年の11.10(11月10日)ゼネストだ。まだ10代の頃、米軍基地を存続したまま日本復帰を取り決めた沖縄返還協定に抗議する大規模なデモに参加。目の前で警察官1人が亡くなり、「なぜ同じ沖縄人が争わねばならないのか。運動家にはなれないが、なにか表現したいと思い、頭に浮かんだのが写真だった」。 東京で東松照明のワークショップに参加し、沖縄に戻った石川は、米兵を撮るために外国人バーで働き始める。映画では、黒人兵と愛し合うバーの女性たちを活写した初期写真集『熱き日々 in キャンプハンセン!!』『熱き日々 in オキナワ』『赤花 アカバナー 沖縄の女』を手に「愛」について語り、今は閑散とした街を巡る。米軍基地には反対だが、兵士にはひとりの人として接する石川の生き方も見えてくる。 また、砂入監督への信頼なしには撮れないシーンもあり、石川真生と監督がタコライスを食べる場面も心に残る。砂入監督のグラフィカルな編集や沖縄のアーティスト吉濱翔によるサウンドも効果的だ。 さらに、9月21日より沖縄で先行上映される『劇場が終わるとき』にも石川が登場。監督はオムニバス映画『パイナップル・ツアーズ』を監督した一人でもある沖縄の映画作家・真喜屋力だ。舞台は、1950年に建てられ、2023年に惜しまれながら閉館した首里劇場。戦後賑わいを見せた首里劇場は、映画が斜陽になると成人映画館として生き延び、2021年に名画座に転身。劇場を守り続けた3代目館長・金城政則が癌で急逝し幕を閉じた。戦前の劇場様式を残した、花道がふたつある映画館。解体までの気配や記憶を石川真生が撮る。 首里劇場に思い出のある監督や俳優などが劇場を訪れるなか、踊り子・牧瀬茜のパフォーマンスを石川が撮影。また、かつて撮影した沖縄芝居の仲田幸子も特別出演する。病を押して「死ぬまで写真を撮るよ」と笑う石川、解体現場に向かう石川の姿が、首里劇場の73年の歴史に重なる。東京では2025年初春、ユーロスペースで公開される。両作品を通じて石川の愛する沖縄に触れたい。 文:白坂由里 <作品情報> 映画『オキナワより愛を込めて』 8月31日(土) 公開 ※8月24日(土)より沖縄先行上映 映画『劇場が終わるとき』 2025年初春、ユーロスペースにて公開 ※9月21日(土)沖縄・桜坂劇場にて先行上映