「隠れヤングケアラー」を見逃すな 全生徒アンケから浮かんだ家庭の実態 薩摩川内市が始めた「誰も置き去りにしない」取り組み
鹿児島県薩摩川内市が、悩みを抱える子どもたちの支援に力を入れている。相談窓口を設置し、学校では周知のための授業を実施。家事や家族の世話などを日常的に行うヤングケアラーの問題を含め、子どもが自らSOSを発信できる環境づくりへ試行錯誤している。 【写真】薩摩川内市の位置を地図で確認する
「当たり前だと思っている困り事は、ヤングケアラーの悩みかも」。7月中旬、同市の永利小学校であった授業。市の担当者の呼びかけに、4~6年生の児童は熱心に聞き入った。 市は2024年度、全34校の小中学校・義務教育学校で、ヤングケアラーや命の大切さについて考える授業を始めた。背景にあるのは、子どもたちの認知度の低さだった。 市は22年、ヤングケアラーに関する国の抽出調査に合わせて、独自に市内の小学校高学年と中高校生全員に同じ調査を実施。ヤングケアラーという言葉を「聞いたことはない」「聞いたことはあるが、よく知らない」が計8割を超えた。一方で「家族の中で世話をしている人がいる」は7.2%。この中で勉強の時間や十分な睡眠が取れないという答えが10%程度と、一定数いることが分かった。 結果を受けて市は23年度、24時間相談できるフリーダイヤルを開設。市教育委員会と連携し、学校の朝礼などで説明する時間を設けて周知を図った。
しかし、これまでの1年以上の間に電話相談はゼロ。社会福祉課の紙屋一朗課長は「該当する子どもがいないわけではなく、ヤングケアラーだと気付いていなかったり、声を上げにくい状況だったりするのでは」と推察する。市はより相談しやすいように、今年7月からLINE(ライン)でも受け付けを始めた。 同時に開始したのが各校での授業だ。話を聞いた永利小6年の平井ひなたさんは「いつも遊べない友達がいたら困っていないか聞いて助けたい」と話した。一方で児童に対する無記名アンケートの中には、今後のトラブル対応の回答で「誰にも言わず自分で解決する」を選択した回答も複数あった。 授業では、インターネットトラブルやいじめなどについても話す。紙屋課長は「子どもたちの声をいち早く拾い、力になりたい。ヤングケアラーに限らず、いじめや虐待など何でも相談してほしい」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島